活動を始めて1年が経ち、ちょっとした異変が。様々な悩みを抱えた元受刑者らが、西村のもとへと相談に訪れるようになったのだ。
「300万円、恐喝を受けたんですよ…」そう語るのはジュン、56歳。主に薬物事件で7回も服役。悪い仲間との縁を切るため、五仁會の門を叩いた。以来、ジュンは、一つ年上の西村を何かと頼りにし、街の清掃ボランティアにも顔を出すようになった。
「睡眠薬なり(精神)安定剤をたくさん飲み過ぎてしまう。孤独でおるとやっぱりそういう道に走りやすい。立ち直った人と一緒にいるのが一番いい」(ジュン)
ジュンは、ロアビルに住み、西村のもとで更生を目指す決心を固めた。しかし、2週間後、ジュンの入居予定の日。この部屋で生活しているはずのジュンの姿がなかった。
「ちょうど3日くらい前に泣きそうな声で電話がかかってきて、『まこさん、もう自分だめかもしれないです』って言うので」(西村)
連絡を求めるメッセージをLINEで送るも既読はつかず、梨のつぶてとなった。3週間後、ジュンから突然の電話があった。昔の悪い仲間に追われ、四国にある薬物依存症のリハビリ施設に逃げ込んだというのだ。
「ボランティアとかちゃんとやって行きたい」(電話口のジュン)
「帰って来られる時はいつでも帰ってきて。みんなで迎えに行くんで」(西村)
無事の知らせにひとまず胸をなで下ろした。
「それも五仁會の一つの評価じゃないですかね。クスリよりそっちのほうがいいと思って。犯罪やる人は(他人に)甘えられない性格の人が多いので」(大野教授)
絶縁状態の息子たちへの思い
