しかし、劣勢に追いやられていた伊藤叡王は、残りの持ち時間の半分を投入して銀引きの一手をひねり出す。依然として形勢は藤井王座側に傾いていたものの、ここから流れが変わり逆転勝利を引き寄せることとなった。
木村九段は、「藤井王座の馬引きに対する伊藤叡王の銀引きの一手が勝因になったと思う。有力視されていたのは先手陣に飛車を打ち込む攻めの一手だったが、桂馬の応手で一手早くやられてしまう。そこで、あえて飛車を急いで打たず、銀を引いて訳を分からなくしたのが面白いところだった」と解説。「銀を引いて“訳を分からなくした”。伊藤叡王自身も訳が分からなくなっていたと思いますが、藤井王座もペースを乱したんだと思う」と渾身の勝負術に感服していた。
「藤井王座としては流れの悪さを感じることになったのでは」




