ジャーナリストの青山和弘氏は、封印について「その通りだ」と評する。「前回は『勝てば総理になれる総裁選』だったため、『総理大臣になると、こうする』と、それぞれが強く言い合った。しかも9人も出たため、それぞれ埋没しないようエッジの立った政策を挙げていた」。

 しかし今回は「勝っても、野党と連携していかないと、総理になれるかわからない。自民党内も議員が減っている。全員が前回(総裁選で)落ちた人で、それぞれ理由がある」という。

 高市氏に関しては「党内的に『結束できるのか』という声が多かった。公明党からも『右にエッジが立ちすぎる』と評判が立ったため、石破茂総理に決選で負けた」。小泉氏も「解雇規制の見直しや夫婦別姓など、エッジの立った政策を打ち出したが、討論での失言もあって、一気に失速した」と分析。

 そして「『ここを直していかないと今回は勝てない』との反省から、持論を封印して、多数を取る。内向きの総裁選に勝ち抜くことを考えた総裁選が始まってしまった。だから前回よりも丸まった政策しか出ていない。一方で『国民の方を向いてなかった』『野党みたいなものだ』と言っているのに、これだけ丸まった政策を掲げていたら、野党として注目されないのに、今回の総裁選レースは完全に矛盾した状況になっている」と語る。

 今回“言いたいけれど、言わなかったこと”は何か。高市氏は「靖国神社へは総理になっても参拝する」との主張について、今回は明言しなかった。「『靖国神社は大事なところだ』と、行きたい意志は示したが、明言しないことで、公明党や外交面の不安を払拭したかった」。

 また「食料品の消費税率ゼロ」についても、「『食料品の消費税を見直すことになると1年ぐらいかかる』と、石破氏と同じ言い訳をしている。消費税の見直しには、党内の財務省に近い人たち、加藤勝信財務大臣もいるが、何と言っても麻生氏が慎重だ。そういう人たちに支援してほしいとアピールした」とする。

 こうした政策提言によって、「『高市氏が主張すべきことを主張するのが良かった』という人にとっては物足りない」というが、「営に聞くと、ちょっと緩めても保守層は高市氏から逃げない。逃げ場もない。多少失望されても、マジョリティーを取って、ウイングを広げた方が良いという戦略になった」と解説する。

小泉氏が前回総裁選で落ちた理由
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