■「奇跡の山小屋」を目指して
穂高岳山荘
山荘の創立100年を機に、2023年から恵さん自ら動画配信を始めた。「広報的なことをやってきたっていう思いは、これまでのなかで自分でもあって。広報が先行しちゃうと、『こんなにすごいんですよ』って言いすぎちゃうと、結局現地に行ったときに『クオリティが低い』みたいなことになるじゃないですか。それは本末転倒だなって思っていて。クオリティがあるところで、それを嘘偽りなく言うことが出来ることこそ広報だなってずっと思っていて」(恵さん)
26歳で山荘を継いで以来、登山客が何を求めているのかを考えてきた。
「昔、お父さんが『ハードの面は俺がするから』って」(恵さん)
「ソフト面には一切手をつけない。ここ10年ぐらいお客さんにサービスするとかお客さんが喜ぶようなことは一切手がけずに形(山荘)を作ってきた。今度からはソフト面がどんどん充実していったら、本当に奇跡の山小屋になる」(英雄さん)
恵さんは、宿泊費や飲食代などを現金以外で支払えるようにした。山小屋では珍しいことだ。穂高岳山荘の宿泊費は1泊14500円。「縦走したりして何泊もすると結構(現金を)持ち歩かなくてはいけなくて大変。プラス、雨が降って下りられなくなったときに、『現金はもうない、これ払うと交通費なくなっちゃう』って時に、ちょっと無理して下りようってことも防げる。安全にもつながる」(恵さん)
また、穂高岳山荘では荒天時のキャンセル料を無料にしている。「我々のところって本当に稜線上だから、キャンセル料の設定によって安全じゃなくなってしまうことも考えていかないといけない。山小屋が何であるのかというと、安全に登って下りていただきたいから。それこそ重太郎が最初に思ったのが、そういうところなので」(恵さん)
事故があればレスキューに出動することも
