数日間滞在し、内密出産をした。「赤ちゃんの声を聞いたら、『ごめんね』しか言えなくて。本当はもっと『大好きだよ』と言ってあげたかったけど、『産んでしまってごめんね』『今までつらい思いさせてごめんね』っていう」。

 「自分で育てたい」心が揺れ始めた美咲さんに、真琴さんが寄り添う。「行政に支援をしていただきながら自分で育てられるようにお手伝いできますよというお話をしている。一番良い選択がどれなのかをしっかり考えて選んでいただくのが一番大切だと思っているので、そこは押し付けることもないし、説得することもない」(真琴さん)

 「ずっと抱っこしたいし、ずっと隣にいて欲しいけど、一緒にいることがつらい。でもかわいいし、自分の子どもだし」。美咲さんの愛情は募る一方だった。

 赤ちゃんを連れて帰ることもできる。ただし、行政に自ら出生を届け出ることが条件だ。「家に帰って、そんな父親がいる場所で育てていくこともできないし、どうすればいいんだろうって……」。

 病院に滞在できるのは一週間ほど。決断の時が近づいていた。

特別養子縁組に向けて
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