労働上限の緩和の前に改善するべきこととは
小室氏は、労働上限の緩和を認めるには、その前に改善するべきことがあるとする。
「あくまでも97%の人たちの普通の働き方は、今でも非常に両立が難しいので、時間外(残業)割増率は1.5(倍)に引き上げる。それから勤務間インターバル(次の勤務までの休息)を義務化する。労働時間の単月の上限は100時間じゃなくて70時間まで下げる。あくまでそれが達成できたら、一部の人の上限の緩和はありうる」
小室氏によると、先進国の中では日本は基本給も残業代も低いのに、労働時間は多いという。そして小室氏は、「労働時間に規制があることで生産性が上がる」ということも提唱している。
この話を受け、ニュース番組『ABEMAヒルズ』のコメンテーターで慶應義塾大学教授・教育経済学者の中室牧子氏は次のように述べる。
「厚生労働省が今よりももっと働きたい人はどれぐらいいるのかということをデータで取ってみると、6%強ぐらいという数字が出ている。なので、もっと働きたい人がいるということで始まった労働時間の規制緩和の話ではあるが、実は、そんなに多くの人が今よりも働きたいとは思っていない」(中室牧子氏、以下同)
「6%強の人たちのおよそ半分は、週の労働時間が35時間以下のパートタイムの労働者。パートタイムの人たちがどうしてもっと働きたいと言っているのかというと、おそらく年収の壁の問題があるが、労働時間の問題とは別に年収の壁の問題は解決をして、もっと働きたいと考えているパートタイム労働者の人に、もっと働いてもらえるようにしましょうよというのが重要なこと」
「もう1つ、一般労働者の残業時間の上限である80時間。これを超えて働きたいと思っている人は0.1%しかいない。この話、非常に注意しなければいけなくて、高市総理は、労働者自身の選択のもとでということを指示書の中で上野大臣に言っている。あくまで労働者の選択の結果であるということが非常に大切。労働者が希望する範囲でということがとても大切なので、何かを強制されるような話ではない」
中室氏「鍵は労働者自身に」
