■ 住民にコストを押し付ける「不合理な仕組み」
解決が困難な理由を、厚労省(旅館業法)と観光庁(民泊新法)に聞いた。
厚労省は「旅館業法では宿泊者の不法侵入・騒音・ゴミ等のトラブルには対応できない」としている。また、客による迷惑行為が相次いでも施設が営業できる理由については、「旅館業法上の欠格条項(精神の不調・反社会的勢力等)に該当しない限り、基本的に営業は許可される」からだという。
一方、民泊新法やそのガイドラインでは、事業者に「周辺住民の苦情や問合せに適切かつ迅速に対応すること」や、「場合によっては宿泊者に退室促す等の措置を取ること」が求められている。
では、なぜトラブルは相次ぐのか。観光庁にこの規定について聞くと、状況が改善しない場合は事業者に行政処分もありうるとしたうえで、「実際は自治体から『証拠を集めるのが難しい』という声が上がっている」との回答が返ってきた。
三輪氏は罰則規定がないことを課題としてあげる。「(法では)事業者に対応義務が謳われているものの、罰則がない。罰則がなければ対応しない事業者というのは出てきてしまう」
法のはざまに落ちた民泊トラブル。事業者が対応しない場合、その対応は周辺住民が担うしかない状況だ。三輪氏はそのコスト負担の問題を指摘した。
「防犯カメラで迷惑行為を記録することなどは、本来的には事業者・管理人がやるべきこと。しかし、住民は何の利益もないのに自分たちの生活を守るためにやらざるを得ない。法制度や仕組みが不合理なまま定着してしまっているという良くない形だ」
「近隣の方にとっては“毎日”のこと。近隣の方の毎日の生活に影響が出てまで、誰かの経済的利益になるようなことを社会として推進しなければいけないのか?ということだと思う。社会的なコストを、何も利益を得ていない住民の方に押し付けているような結果になっているのだとしたら、やはり立法措置は必要なのではないか」
自治体独自で対応強化も…「地域差」が課題
