■無罪が確定するまで58年
ドライブをする巖さん
58年かかった──。巖さんは精神をむしばまれ、ほとんど受け答えをしない状態だが、判決後初めての公の場では「無罪勝利が完全に実りました。きょうはめでたく皆さんの前へ出てきた」としっかりと自分の思いを述べた。
袴田弁護団・主任弁護人の小川秀世弁護士は「僕は絶対ね、巌さんに何か通じているのだと、何かそれが伝わっているのだということを思って、そのことをお伝えしようと思っていたら、 本当に伝わっていたじゃないですか。もうすごくうれしいですよね」と涙ながらに語った。
元プロボクサーの巖さんは、58年ぶりに真の自由を手に入れた。元死刑囚だったが、今はいち市民。そんな巖さんは、幼いときに暮らしたところなどを毎日ドライブしている。このドライブを「パトロール」と呼んでいるそうだ「やることがあるんだね。昔からだもんだで。この場所なんだが、変わっちゃってんだね」と毎日行う理由を語った。
巖さんは、92歳になった姉のひで子さんと、浜松市で暮らしている。ひで子さんは「最近は(巖は)割合と落ち着いているよ。88歳でそんなシャキシャキはしないだろうが、なるべく長生きさせたいと思うよ」と話す。
逮捕された後、何があったのか。巖さんに謝罪した静岡県警の津田本部長は「強制的、威圧的な取り調べがあったということで、誠に申し訳なく思っております」と述べている。強制的、威圧的な取り調べとは何なのか。過去に静岡県で起きた冤罪事件をたどると、その正体が浮かび上がる。
長きにわたる冤罪と拷問のような取り調べの歴史
