ここで、ベネズエラの基礎知識を紹介する。南米大陸の北部にあり、面積は日本の約2.4倍。人口は約2600万人だ。世界有数の石油産出国で、原油の確認埋蔵量はサウジアラビアを上回る世界1位。政治体制は大統領制の共和国だが、権威主義国家で、事実上「独裁」国家だ。
1999年、反米左派勢力で石油依存からの脱却などを目指す「21世紀の社会主義」建設を標榜したチャベス大統領が就任。チャベス氏の死後、2013年にその方針を継承する形で大統領に就任したのが、今回拘束されたマドゥロ氏だった。
坂口氏は「『なぜ彼なんだ?』初めはびっくりした。就任した時も初めはオドオドしていていた。例えば麦わら帽子みたいなものを被って、帽子に鳥を刺して、『今朝、私の頭の周りを1羽の小鳥がずっと回っているんだ。あれはチャベス大統領が私にメッセージをくれているに違いない』と言って、何かあれば『チャベスだ』『私はチャベスの息子だ』と言いながら政権を担い始めた。そういうスタートだった」と振り返る。
そして、「なぜそんなそれほど強くないリーダーのマドゥロ氏が後継に指名されたかというと、おそらくキューバの信頼があったからだ。さまざまな政権運営に関して、フィデル・カストロ氏のアドバイスを得ていた」と推測する。
マドゥロ大統領の不運は、就任の翌年から始まった。2014年、1バレル100ドルあった原油価格が、一気に20ドル台まで下落。ベネズエラの経済成長率は7年連続マイナス、GDP(国内総生産)は5分の1にまで縮小した。さらに、ハイパーインフレで物価が1300倍に。トイレットペーパー1つに札束を抱えて買うような異常事態となった。
その後、何度か選挙が行われるが、その度に不透明なプロセスのまま、マドゥロ氏は一方的に「勝利宣言」を行う。さらに不透明な選挙は続き、国際社会から求められた説明責任を果たさないまま、2025年1月、3期目の大統領就任式を強行した。
2014年以降、政治社会情勢やインフラの悪化により、ベネズエラ国民の国外流出が増加。これまでに約790万人が、コロンビアやペルーなどに流出したと言われる。
坂口氏は「国内から食料品が消えたという中、国民の4分の1が、国の外に逃げざるを得なくなった。普通考えたら、そのような状況で政権が続いている、この間の選挙で勝ったと信じる方がおかしいが、そこでも体制を維持してきた理由は、国民に対する、また反政府派市民に対する、非常に強い弾圧を続けてきたからだ」と解説する。
しかも要職についている各トップが、石油利権や麻薬などなんらかの汚職に手を染めていると言われる状態だ。そんなベネズエラに対しアメリカは、2025年8月から軍事展開を進めていたと、坂口氏は指摘する。
「8月末から、ベネズエラの近海に海軍を集結し始めた。その間、裏で交渉しながら、例えば亡命を認めるなど、さまざまな交渉をしながら、マドゥロ氏に対して政権を降りるように求めてきた。しかし膠着(こうちゃく)して動かないため、プランBに切り替えたのだと思う」
マドゥロ大統領側からみた今回の真相
