■「受忍論」という厚い壁と放置されてきた傷跡
戦勝国はもちろん、敗戦国のドイツやイタリアも民間被害者に補償を行っている。日本ではこれまで救済法案が14回提出されたが、いずれも廃案になった。なぜ補償されないのか。旧軍人の戦後補償を担ってきた厚生労働省は「空襲被害者の補償は所管外のためお答えできない」としている。
戦後補償に詳しい京都大学の直野章子教授はその理由をこう答える。「一つの大きなロジックが『戦争被害受忍論』。戦争という国家の非常事態においては、何らかの被害を受けたとしても、みんな等しく我慢しなければならない。よって、国にはその被害を補償する法的義務はないという考え」。
国の諮問機関は1984年、受忍論を背景に「国が行う措置はない」という答申を出した。以降この方針を崩していないのだ。
「被害の実態として国民がみんな同じ被害を受けたわけではない。それを一緒くたに『みんな我慢しなさい』と言ったら、より被害が甚大な人がより我慢しなければいけない。戦争被害者として全てを失って、その後もずっと戦争の傷跡を背負い続けさせられた人たちを、ずっと放置してきた日本って何なのか」(直野教授)
浜松大空襲の体験をつづった手紙を天皇陛下や総理大臣に送る木津さん
