■どのようにして燃え広がったのか…証言と映像から検証
では、あの日、火はどのように広がっていったのか。消防に通報があったのは、午後1時2分。午後3時に岩手県の防災ヘリが撮影した映像を見ると、色の濃い煙が合足の東側に大量に流れているのがわかる。煙が合足からおよそ6キロ離れた半島の先の方まで行っていたことから、発生から2時間ですでに600ヘクタール以上延焼したと見られている。
岩手県防災航空隊の高田邦生隊長は「午後1時から3時、4時ぐらいまでの時間がとにかく考えられないようなスピードで延焼が拡大したのかなと感じています」と振り返る。
合足地区に住む古内嘉典さん。山火事の発生を知らせる午後1時11分の防災無線を聞き、外へ飛び出した。古内さんは「ここまで出てきたんですよ。そしたら向こうの方に煙が見えたので。5分ぐらいしてからフェンスのあそこのところに炎が見え始めて。それほどでもないぽやぽやっとした炎だったんですけども、立っていられないほどの風だったので、あっという間にもう燃え広がったというか」と語る。
午後1時45分ごろ、古内さんが撮影した写真には、漁港近くの山から煙が大きく上がる様子が写っている。同じころ、同じ合足地区で撮影された映像では、黒い煙に加え、赤い炎が激しく吹き出しているのが見て取れる。
合足漁港からおよそ1.2キロ、三陸町綾里の小路(こじ)地区。炭釜(すみがま)サチ子さんは、午後2時前、避難のため自宅から500m先の八ヶ森トンネルに車で向かった。炭釜さんは「お墓とそこの下から燃えていた」と話す。県道の両側が燃え、その先のトンネルの外側もすでに激しく燃えていたという。
「トンネルに入ったら真っ暗闇で煙だし、火の粉が飛んでいるし、トンネルの中すごかった。無我夢中で走ったね」(炭釜さん)
合足からおよそ2.4キロ離れた三陸町綾里の港地区。新沼公明(こうめい)さんは、山から炎が出ているのを見た。午後1時54分に新沼さんが高台から撮影した映像には、合足方面の山から煙が猛烈に吹き出し、炎に照らされているのが映っている。新沼さんは「オレンジの炎と煙がすごくて、段々こっちに向かってきたのでこれはただごとじゃないなということですぐ避難した」と話す。
合足からおよそ2.3キロ離れた三陸町綾里の石浜地区。北日本水産の営業部長・古川翔太さんは、会社の裏山が燃えているのを社員と一緒に目撃した。午後1時57分、古川さんが会社の敷地から撮影した映像には、合足方面にある山から炎が見え、ぶ厚い煙が海側へと流れているのがわかる。古川さんは「ここも火が来ていましたし、そっちの田浜地区の住宅の上の山の辺りでも火柱が立っていて。早く三陸方面、向こう側に逃げようと社員一同作業をやめてすぐ向こう側に避難した」と語る。古川さんはこのとき、海を挟んで700m以上離れた対岸にある田浜地区でも、火柱が上がっているのを目撃していた。映像には、その炎も捉えられていた。
合足からおよそ2.7キロ離れた田浜地区。消防団員の木下智彦さんは、合足で消火活動をした後、午後2時ごろに戻り、山が燃えているのを見た。木下さんは「田浜の方に戻ってきたら、もうここは真っ赤」「塀が見えているじゃないですか、あの塀の上。バチバチバチって燃えていたんです」と証言する。
木下さんがこの時確認した炎は、石浜地区で古川さんが撮影した炎と時間や場所が一致している。火元の合足から田浜までは山と海をはさんでおよそ2.7キロ。証言と映像からは、この距離を燃え広がるのに要した時間が、午後1時からのわずか1時間だったと読み解くことができる。
峠特定准教授は「出火した直後の1時間や2時間の短い時間の間に延焼していた時の速さが非常に速くて、容易にコントロールできないぐらいのサイズに至ってしまったことが大きな特徴だと思います」と分析する。この時、山で一体何が起きていたのか。
「谷」で起きた激しい燃焼と飛び火
