■相次ぐ大規模火災と気候変動への警鐘
2025年は、全国で大規模な山火事が相次いだ。岡山市でおよそ565ヘクタール、愛媛の今治市で452ヘクタールなど、例年は年1件程度の大規模火災が、すでに7件発生していた(2025年6月時点)。
新井場部長は「もう圧倒的に多いと思いますね。100ヘクタール燃えるというのは大きな山火事。日本では大きな山火事になりますので、それが相次ぐというのは珍しいと思います。(相次いだ要因は)雨が少なかったというのがある」と指摘する。
2025年に発生した7件をみると、この冬の降水量は平年の15パーセントから27パーセントと少なかった。岡山市など3カ所では過去最も少ない降水量だった。
山火事発生からおよそ3カ月。大船渡市では仮設住宅の入居が始まるなど被災者が少しずつ新しい生活へと踏み出し始めていた。自宅が全焼し避難所生活を送っていた袖野さんの一家は、この日、市営住宅へと引っ越した。仮の住まいではあるものの、家族だけの居場所に安堵の色が浮かぶ。
「やっとっていう思いはありますけど、ただこれが最初の第一歩だと思っていますので、元にあった場所に再建する、そこからがスタートだと思っているので」
養殖施設の一部が焼け、およそ250万個のアワビを失った北日本水産。取引先からアワビを買い戻し、養殖再開に向けた準備を始めていた。全滅したと思っていたが、水槽でおよそ20万個が奇跡的に生きているのが見つかったという。「いやあ、嬉しかったですよ。本当ダメだと思っていたんですよね」(古川社長)
食用アワビが育つには3年から4年がかかる。古川社長は、クラウドファンディングで支援を呼びかけながら再開を目指している。「第3章ですかね。震災から考えれば。がんばります」。
峠特定准教授は、文部科学省の研究プログラムの一環で将来の気候変動が山火事にどう影響するかを研究している。「大船渡の領域の降水量は今よりもちょっと増えるパターンが冬は増えます」。
シミュレーションによると、2100年ごろの大船渡市の冬の降水量は、現在より増える予測となっている。一方で、気温が2度から4度上昇するため、蒸発量が増え、土壌は乾燥する予測だという。「土壌水分量がこれだけ乾燥側にシフトするということは、表層地表面の状態というのは乾燥しやすくなって、林野火災的には起こりやすくなると言えるとは思います。こういうシミュレーションをしていけば(傾向などが)見えてくると思っていて、引き続き研究を続けていきたいと思っています」。
新井場部長は「日本ではそんな大きなもの(山火事)はもう起きないだろうと、なんとなくいろいろな人が思っていたんだとは思うんです。だけど、こういうことが起きうるんだということが少なくとも2025年で分かったので、それに備えるようなことは考えていかなければいけないんだろうなと思います」と語る。
運命の1時間をきっかけに起きたかつてない延焼。1つの火がもたらす甚大な被害と気候変動による将来的な乾燥の兆し。大船渡市の山火事は、我々に警鐘を鳴らす。
(岩手朝日テレビ制作 テレメンタリー『迫る炎 ―大船渡山火事 運命の1時間―』より)
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