己の将棋を壊し、ゼロから組み替えるという苦難の道。その過酷な試行錯誤の末に見事A級へと返り咲き、前期挑戦者とのプレーオフを制して、初の名人挑戦権を掴み取ったのである。
一度は最高峰の舞台から落ちたものの、血のにじむような努力で再び戻り、大舞台で「咲く」チャンスを得た糸谷八段。激戦の幕開けとなる第1局、そして続く七番勝負のシリーズ全体を通して、「盤上に花を咲かせ続けられるように頑張りたい」と、静かな、しかし熱い闘志を燃やしている。
今期の糸谷八段の挑戦は、盤外での重責を背負いながらの快挙でもある。日本将棋連盟の常務理事として激務をこなし、開幕直前にもシンガポールへ赴くなど多忙を極める中でのA級制覇だった。「現役理事」が名人に挑戦するのは、1986年の大山康晴十五世名人以来、実に40年ぶりとなる歴史的出来事だ。
さらに、自身にとって2026年度の初陣となるこの開幕局には、もう一つの劇的なドラマが懸かっている。2014年の竜王獲得で八段へ昇段して以来、現在までに公式戦で249勝をマーク。本局で絶対王者の藤井名人から勝利をもぎ取れば、節目となる250勝目に到達し、規定による「九段昇段」を果たすこととなる。
自らをアップデートし続け、不屈の精神で這い上がってきた挑戦者は、椿山荘の盤上にどのような大輪の花を咲かせるのか。将棋界の歴史に新たな1ページを刻む大一番が、いよいよ始まる。
(ABEMA/将棋チャンネルより)
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