現役を引退しても、やっぱり“ボクサーの血”が流れている
優大は会場入りするなり慌ただしく出店準備に取り掛かった。多くのボクシング関係者が店前に顔を揃え、言葉を交わし、開店前に優大がドリップするコーヒーを購入していった。すると優大がリングに向って歩き始める。そのままリングに上がると、ひとつ深呼吸をしてシャドーを始めた。引退から10カ月が経過したが動きは軽快で、ガード越しからのぞく視線には現役さながらの鋭さと力が感じられた。
自身の現役ラストマッチは2025年3月30日、1年前にタイトルを奪われたメルビン・ジェルサレム(フィリピン)とのリマッチだった。しかし、同じ相手にいずれもフルラウンドの末に判定で敗れた。その2カ月後に銀次朗の身に不幸が起こった。
「あのまま辞めようなんて1ミリもなかった。あくまでも“途中”だったんです」
そう話した優大は、久しぶりのリングに上がったときの気持ちを次のように説明する。
「リングにはボクサーじゃないと上がれない。それはわかってますが、なんかこうパッとリングが光って見えたんです。いまはカフェやって、ボクサーだったことを忘れているようでも、結局、僕には“ボクサーの血”が流れているんですよ。スポットライトを浴びたリング見ちゃったら、一気にボクサーになるっす。めっちゃボクサー蘇ったっすね(笑)」
「興毅さんは引退しても選手のために挑戦を続けている。文句があるなら俺に」
