中学生棋士・藤井聡太四段(15)が9月7日に行われた新人王戦準々決勝で敗れ、昨年12月のデビュー戦以来の成績を、39勝6敗とした。デビューから破竹の29連勝で、歴代最多の連勝記録を樹立したが、その後は10勝6敗。鮮烈な連勝劇に陰りが見えたように思うファンもいる中、「6敗」の相手を確認してみると、その全てが20代の若手棋士だった。藤井四段の成績の裏にあるのは、才能あふれる20代棋士が競い合う群雄割拠の状況だった。
改めて藤井四段が敗れた相手を確認した。連勝を「29」で止めた佐々木勇気六段(23)は若手棋士による棋戦・加古川青流戦の2013年の優勝者。8大タイトルの1つ、王位では挑戦者決定リーグで佐藤天彦名人、渡辺明竜王と同組ながら3勝2敗と勝ち越すほか、羽生善治二冠から王位を奪取した菅井竜也新王位(当時七段=25)にも勝っている。この菅井王位は、藤井四段に3つ目の黒星をつけた相手でもある。
2敗目を喫したのは三枚堂達也五段(24)。藤井四段と対戦した上州YAMADAチャレンジ杯の準々決勝で勝利すると、そのまま勝ち進み自身初優勝を果たした。5敗目を喫した井出隼平四段(26)は、佐々木勇気六段と同じく加古川青流戦の2016年優勝者。そして9月7日に6敗目となった相手、佐々木大地四段(22)は優勝歴こそないものの、2016年度は25勝10敗の好成績で、全棋士で勝率ランキング6位に入る0.714の数字を残した。
そして4敗目を喫した豊島将之八段(27)が、6敗の中でも最強の相手といっていい棋士だ。タイトル歴こそないものの、タイトル挑戦歴は3回。最高賞金額の竜王戦で1組、将棋界のベースとなっている名人戦・順位戦でもA級と、日々トップ棋士との対局を続けている。今期の順位戦では、昇級1期目ながら負けなしの3連勝と絶好調。今の豊島八段に勝つのは、藤井四段はおろか将棋界全体でも至難の業だ。
29連勝中も、その後の対局で敗れた時も「もっと力をつけたい」と藤井四段は繰り返している。それは20代前半から半ばにかけて、将来タイトルを取るであろう競合がごろごろいるからだ。藤井四段の快進撃で将棋に興味を持つ人は一気に増えた。最近では藤井四段が敗れた時の方がニュースになるくらいだ。果たしてどんな相手に敗れたのか。そこに注目すると、同じく20歳前後から大活躍した「羽生世代」のように、確かな実力を身につけた新たな世代がトップを目指して押し寄せていることが分かった。
(C)AbemaTV