既に優勝を目指す戦いは始まっていた。4月4日に放送された「第3回AbemaTVトーナメント」のドラフト会議。所司一門である渡辺明三冠(35)は弟弟子である近藤誠也六段(23)、石井健太郎五段(27)の2人を指名、同門チームを結成した。「いい結果が出たらグッズでも作って配りたい」と意気込む一方、永瀬拓矢二冠(27)・藤井聡太七段(17)・増田康宏六段(22)という最強布陣のチームについて「レーティングで考えたら断トツの優勝候補です。優勝できなかったらおかしいぐらい」と、早くも牽制球を投げ込んだ。プロ将棋界初となる団体戦において、渡辺三冠が盤外でも早くも存在感を示してきた。
▶映像:「将棋界初」ドラフト会議開催!藤井聡太七段に1巡目で複数チームから指名が
豊島将之竜王・名人(29)と並び、将棋界の頂点で超多忙な日々を送る渡辺三冠にとっては、同門ながらなかなか交流ができない弟弟子たちの戦いは、楽しみなようだ。「イベントで一緒に動くことはあるんですが、一緒に戦うことは初めてなんで」と、この大会の活用を考えている。第2回大会で超早指し戦を体験済みの自分はドンと大将で構え、後輩2人にのびのびと将棋を指させる。そんな考えでいる。
将棋では勝つことしか目指すはずもないが、盤外のトークでも切れ味の鋭さを見せてくる。12チームから多数、1巡目指名が入ると予想されていた藤井聡太七段(17)については、注目はしていた。報道陣から指名は考えなかったのかと聞かれると「競合も多そうでしたけど、僕は藤井聡太君と組むっていうキャラじゃないし(笑)」。さらには「どっちかというと、戦った方がみんないいんじゃないですか。そのへんは考えましたね」と、エンタメ要素もしっかり読みに入れていた。
藤井七段といえば、個人戦だった第1回、第2回大会で優勝。その藤井七段を若き実力者・永瀬二冠が引き当てたのだから、いじりたくもなる。「優勝できなかったらおかしい」という発言も、「そうプレッシャーをかけて嫌がらせをしようかな」と笑う遊び心。それだけ永瀬・藤井・増田康のチームの実力を認めていることにも他ならない。同門チーム結成、優勝候補いじり。そして肝心の超早指しによる対局。将棋界初の試みが多数あるこの棋戦を、誰よりも満喫している。
◆第3回AbemaTVトーナメント
第1回、第2回は個人戦として開催。羽生善治九段の着想から生まれた持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算されるフィッシャールールは、チェスなどで用いられるもの。1回の対戦は三番勝負。過去2度の大会は、いずれも藤井聡太七段が優勝した。第3回からはドラフトを経て構成される3人1組の12チームが、3チームずつ4つのリーグに分かれて総当たり戦を実施。1対局につき1勝を1ポイント、1敗を-1ポイントとし、トータルポイントの多い上位2チーム、計8チームが決勝トーナメントに進出する。優勝チームには賞金1000万円が贈られる。
◆出場チーム&リーダー
豊島将之竜王・名人、渡辺明三冠、永瀬拓矢二冠、木村一基王位、佐藤康光九段、三浦弘行九段、久保利明九段、佐藤天彦九段、広瀬章人八段、糸谷哲郎八段、稲葉陽八段、Abemaドリームチーム(羽生善治九段)