「藤井棋聖は時限爆弾を解除し続けた…」将棋中継をドラマチックにする「SHOGI AI」の“人間味” 開発責任者が明かす秘話
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 藤井棋聖の大活躍でネットの将棋中継も人気が高まる中、「観る将」の間で注目されているのが、ABEMA将棋チャンネルの「SHOGI AI」だ。対局者のどちらがどれだけ有利かを「勝率」というパーセンテージで示す方式で、わかりやすいと評判の一方、予想外の手が指されると数値が揺れ動き、コメント欄に「AI、迷ってる」「がんばれAI」などと書き込まれることも。だが、こうしたAIらしからぬ動きの裏側に「AIに“人間味”を加える」という開発側の意図が潜んでいるというのはご存じだろうか。

 他の将棋AIとはひと味もふた味も違う、独自のシステムを作り上げたABEMAの中心人物にインタビュー。「SHOGI AI」があることで中継が大いに盛り上がったという藤井棋聖の熱戦を振り返るとともに、開発までの苦労や思わぬ“事件”など裏側を語ってもらった。

・【映像】藤井棋聖で注目 "将棋AI"徹底解剖


■時限爆弾を解除し続けた藤井棋聖の「AI超え」

「藤井棋聖は時限爆弾を解除し続けた…」将棋中継をドラマチックにする「SHOGI AI」の“人間味” 開発責任者が明かす秘話
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 6月8日、東京・千駄ヶ谷の将棋会館で行われた棋聖戦の第1局は、最終盤までもつれる大熱戦となった。125手目、挑戦者である藤井聡太棋聖が渡辺明二冠(当時は棋聖位含め三冠)の王将に「詰めろ」(次に何もしなければ詰む状態)をかける。渡辺二冠は自の防御をあきらめ、藤井陣内に角を打ち込んで王手をかけた。ここから渡辺二冠は16手連続で藤井玉に王手をかけ、藤井棋聖が猛攻をかわし続けるという、観戦者にとっても手に汗握るクライマックスが30分以上にわたって続いたのだった。

「リアルタイムで見ていて鳥肌が立ちましたね…」

今も興奮した面持ちで振り返るのは、「SHOGI AI」の開発を主導した藤崎智(さとし)氏。ABEMAの最高放送技術責任者である。今年1月から本格的に運用が始まった「SHOGI AI」は、この棋聖戦でも大活躍。藤崎氏はAIの「形勢判断」と「候補手」の表示があったからこそ、見ている側があれだけの緊張感を感じられたのだと語る。

「AI表示があるから『え、これはこっちに逃げたら90%マイナスで逆転なんだ!?』というドキドキがあるんですよね。常に爆弾の処理をしているような状態ですから」

 「SHOGI AI」は対局中継の画面上部に、その時点でのそれぞれの棋士が勝つ確率を「勝率ウインドウ」で表示する。「50%対50%」なら互角、「先手80%対後手20%」なら先手がかなり優勢…という具合だ。一方、画面右側には次に指す手の「候補手」が、“Best”“2(番目)”など推奨順に最大5手まで表示される。

 別々に表される“勝率”と“候補手”だが実際は連動している。ある時点で示されている“勝率”は、実は次に指す側が、AIの示す“最善手”を選ぶという前提での数値なのである。次善手やそれ以下の候補手には右にマイナス〇%という数字が併記されている。つまり“最善手”を指せば今の勝率が維持されるが、それ以外の手を指せば、表示されたマイナス分、勝率が減ってしまう。勝率60%と表示された側がマイナス20%の手を指すと、直後に勝率が40%まで下がってしまう、という理屈だ。

 この「最善手以外を指すと勝率が下がる」という「SHOGI AI」の仕組みが、棋聖戦第1局の最終局面を「映画のクライマックスシーン」(藤崎氏)のように盛り上げたのだった。

 その場面を振り返ろう。125手目、藤井棋聖が渡辺玉に「詰めろ」をかけた時点で、「SHOGI AI」の勝率ウインドウは82%対18%と、藤井棋聖圧倒的優勢を示していた。続く126手目、渡辺二冠は藤井玉に王手をかけるが、勝率は91対9と差がさらに開いた。ところが、である。

 次の藤井棋聖の候補手は4つ。王手をかけている角を取るか、移動できる3か所のいずれかに逃げるか、だ。そして「SHOGI AI」は…角を取る手以外は大逆転と表示した。角から一番遠くに逃げる手がマイナス72%。それ以外の2つはマイナス90%、つまり91対9からいきなり1対99という必敗の状況に陥るのである。

 藤井棋聖は当然のように角を取る。この手自体、藤井棋聖には難しくない選択だったかもしれない。だが素人である視聴者は、大逆転の可能性が数値で示されることによって、藤井棋聖が本当に最善手を指してしのぎ切れるのか、というスリルを体感することになる。

 ここで渡辺二冠は香車で金を取って成り込み王手。今度の対応は二択だ。取るか逃げるか。AI表示は取る手がマイナス96%。正解は「逃げる」だった。

 正確に最善手を指し続ける藤井棋聖。131手目には「勝率」が98%に達した。「間違えなければ藤井棋聖の勝ち」というのがAIの判断である。だが実際の盤面は棋士ですら、本当に詰まないのか読み切れない状況だ。134手目、136手目の王手でも最善手以外はマイナス97%。つまり藤井玉が詰まされてしまうというのだ。

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 解説の郷田真隆九段がうめくように声を上げる。

 「結構危ないけどねえ…」
 だがAI表示の画面を見て…
 「しかしAIさんは詰まないとおっしゃってますね。マジか~」

 こうした言葉を聞くにつれ、AIの最善手を指し続けることが人間業(わざ)ではないことがひしひしと伝わってくる。既に両対局者とも秒読みに追われる1分将棋に入っているからなおさらである。それでも渡辺二冠は最強の王手をかけ続け、藤井棋聖は最善手でそれを逃れ続けた。そして16回目の王手、渡辺二冠が龍で王手をかけたのに対し、藤井棋聖が合い駒に桂馬を打って、これが渡辺玉への王手となる「逆王手」。157手までで渡辺二冠の投了となった。「SHOGI AI」の勝率ウインドウはその瞬間も99%対1%と表示されていた。

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 正にサスペンス映画でおなじみの、時限爆弾の青と赤のコード、どちらかを切れば爆発というシーンが16回も繰り返されたわけだ。視聴者はその時、藤井棋聖が渡辺二冠に挑んでいるだけでなく、AIとも戦っているように見えたに違いない。その意味でAIの突きつける問いに正解を出し続けた藤井棋聖は、「正にAI超え」(藤崎氏)の離れ業を実現したのだった。

 「AIがないと多分、普通に王手を回避して勝ちました、くらいにしかなってないと思うんですよね。何が起きたか、これまで素人にはわからなかったことが、AIができたことによって可視化されて誰もがすごいことを認識できるようになった。それが新たな将棋ブームにもつながっていると思います」

■SHOGI AIの秘密 3つのAIの「合議制」と“人間味”

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 藤崎氏が「SHOGI AI」の開発に取りかかったのは去年の6月ごろ。

 将棋中継の現場責任者にとっては、対局がいつ頃終わるのかを予測するのが重要な問題だった。藤崎氏は市販のゲームソフトを購入し、進行している対局の棋譜を現場で入力、形勢判断していた。やがて周囲の記者たちが藤崎氏のソフトで形勢を知りたがるようになり、「これは需要があるな」と考え始めたという。
同じころ、ABEMAの将棋チャンネルでは若い視聴者層の取り込みが課題となっていた。第一次の藤井聡太ブームも落ち着き、新規の視聴者が思うように増えないのが悩みだった。将棋に詳しくない若い層も取り込みたい…そんな将棋チャンネルの意向を受け、藤崎氏は対局中の形勢を可視化できる独自のAI開発に動き始める。

 藤崎氏がまず考えたのは、AIのキャラクター付けだった。擬人化された3つのAIを能力ごとにそれぞれ「強い」「普通」「弱い」と設定する。ある局面で視聴者が「次の一手」を予想し、「3人」のAIの候補手と比較、どのレベルのAIと一致するかによって自分の実力がわかって楽しめる…という目論見だった。

 だがこれは企画倒れに終わった。3つのキャラをそれぞれ別々のAI開発会社に依頼しようとしたのだが、どの会社も自分のところに「弱い」AIを割り当てられることを嫌がった。そして口をそろえて「視聴者は3つもAI、いらないですよ」と指摘したという。

 藤崎氏はここで発想を転換する。3種類のAIを使う方式はそのまま。ただしそれぞれのAIに局面を判断させたうえで、さらにもうひとつのAIがそのうちのひとつを採用するという手法にしたのだ。AIの「合議制」である。

 「AIによって戦法の得意不得意があるんですよ。『居飛車(いびしゃ)』の戦型が得意だとか『横歩取り(よこふどり)』戦法が得意だとか。対局ごとの戦法に応じて得意なAIの判断を優先的に議長役のAIが選んだりする。そういう『合議制』になっています」
最も重要な議長役のAI、それが「SHOGI AI」なのだという。

 形勢をパーセンテージで表すことにもこだわった。従来のAIの表示方法に不満があったからだ。

 「普通のAIでいうと優勢な側が4000とか9000とかの数字を出していた。いろんな人に聞くと、4000だから勝ってるんだろうけど、どれくらい勝ってるのかわからないというんですよね。じゃあ、世間的には一番わかりやすいものということでパーセンテージにしましたね」

 この「勝率」の表示にはさらなる工夫がある。どんなに一方が有利になっても(詰みの局面でも)決して100%対0%にはならない。AIは間違えなくても人間は間違える、という思想が根底にあるからだ。

 「負けてるほうも0%出されたらもう絶対勝てないってなっちゃうんですけど1%だとまだ逆転の余地がある。人間ってがんばるので。そこだと思うんですよね」

 藤崎氏がこだわっているのは無味乾燥なAIの判断の中に少しでも“人間味”を加えることだ。実は形勢判断の数字も、1局の中で微妙に調整を行っているという。

  「AIは疲れを知らないし時間も関係ないじゃないですか。でも人間はすごく疲れるし残り時間によって焦りも出てきます。そういう人間ならではの要素を考えて終盤になるにつれパーセンテージを調整したりしています」「最強のAIを作るのが目的ではなく、誰にでもわかりやすいものを目指しています。“人間味”を加えることでパーセンテージも揺れ動き、ハラハラドキドキの要素が増していると思いますね」

「将棋愛は誰にも負けない…」

 藤崎氏はそう公言する。愛する将棋を「とにかく面白く伝えたい」という思いがある。

 幼いころから将棋が大好きだった。小学校も中学校も将棋部がなく自分で部を立ち上げた。高校でもやはり将棋部を作ったが、将棋に興味を持つ生徒が他にいなかったため3年間一人も入部者は無し。顧問の英語教師と2人で指し続けた。

 大学卒業後、民放テレビ局を経て自ら中継配信会社を立ち上げる。15年間、会社経営を行った後、サイバーエージェントに中途入社し、AbemaTV(現「ABEMA」)の立ち上げに携わった。そのAbemaTVで将棋チャンネルが作られると聞いた時には「やるのは自分しかいない」と思ったという。

 将棋チャンネルは開設直後、藤井聡太棋聖が7人の先輩棋士と対局する「炎の七番勝負」を企画、藤井棋聖が羽生善治九段を破るなど6勝1敗の衝撃的な結果を収め大きな話題を集めた。藤井棋聖はその後、公式戦29連勝という前人未到の記録を樹立、将棋チャンネルはその対局の多くを中継することで視聴者数を飛躍的に伸ばしていった。

■藤井棋聖はSHOGI AIを2度壊した!?

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 7月下旬。東京・外苑前にある「シャトーアメーバ」を訪れた。この建物には複数のスタジオがありABEMAの番組の収録が行われている。将棋チャンネルの中継も頻繁に行われていて、この日は朝日杯の対局が生配信されていた。

 その「シャトーアメーバ」のとある1室で藤崎氏が「SHOGI AI」のデモンストレーションを行ってくれた。「SHOGI AI」の本体は、至って普通のタワー型デスクトップパソコン。立ち上げると2つ並んだモニターの左側に盤面が現れた。右側のモニターには緑色のベース画面に「勝率ウインドウ」と「候補手」が表示される。この右側の画面を対局映像に重ね合わせることでAIが表示された中継画面が出来上がるのだ。

 この「SHOGI AI」、実際の対局時には、現場に立ち会う記録係が手元で使用するタブレット端末と連動している。一手ごとに記録係が打ち込んだ指し手が、ほぼ同時に「SHOGI AI」に自動的に反映され、評価値が出される仕組みだ。
「SHOGI AI」の運用開始当初、このタブレット端末との連動が思わぬ問題を引き起こしたことがあった。対局が将棋会館などで行われた場合、その映像は現場から

 「シャトーアメーバ」などに送られそこで「SHOGI AI」の表示と合成されるわけだが、記録係のタブレット入力は距離と関係なくほぼ同時に「SHOGI AI」に反映されるのに対し、現場からの映像は技術上どうしても数秒遅れて到達する。それをそのまま合成すると、「SHOGI AI」が先に指し手を表示して、数秒後にその通りの手を棋士が指すという珍現象が起きたのだ。

 「やらせじゃないのか、とか出来レースだ、とか視聴者からいっぱい来ましたね。改善のため1週間、SHOGI AIの使用をストップしました」(藤崎氏)

 現在はタブレット端末からの情報と送られてくる映像の時差を修正し、ずれがないように調整しているという。

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 藤崎氏によるデモンストレーションでは適当な棋譜を直接その場で入力した。1手入力すると左側のモニターの下に3つのAIによる読み筋が一斉に表示される。数秒後、右側のモニターの「勝率ウインドウ」にパーセンテージが、「候補手」欄には“最善手”を含んだ5つの候補手が現れる。各読み筋のうち、議長役のAIが実際に採用した手は赤く示されるが、モニターを見ていると赤く表示される読み筋は時間とともにめまぐるしく変わっていく。次の手が指されるまで3つのAIはより深く手を考え続け、採用されるAIも入れ替わり、示される「勝率」や「最善手」もどんどん変わっていくのである。

 「最初は早く結果を出すために“浅読み”の評価を出すんですけど、そこから深く考えていって、ずっと永遠に考えていくことになります」

 藤崎氏によれば、AIが考えすぎて壊れてしまったことが何度かあるという。

 「AIが考える最善手ではない手が指されたときにAIはすごく考えちゃって、急に画面が消えて壊れちゃったことがあるんですよ。調べたらボードが焼けてしまっていて。恐らく考えすぎでパソコンが熱暴走して落ちてしまったのではないかと」

 そうした現象は、藤井棋聖の対局でも2度、起きていた。

 「あまりにも不思議な手を指されたことがあって、メモリーがオーバーしちゃったことがあるんですよね。パソコンが持っているメモリーを超えるような指し手が指されたときに…」「少なくとも2回、落ちたことがありますね」

 現在、藤井棋聖の対局中継などでは「SHOGI AI」を2台用意して万が一に備えているという。

■藤井棋聖の「3一銀」がSHOGI AIを進化させた
 

 7月29日。AI中継があるからこその「事件」が起きた。

 豊島将之名人(・竜王)に渡辺明二冠が挑む名人戦七番勝負の第4局の最終盤。「SHOGI AI」は75%対25%と豊島名人優勢を示していた。
 
 渡辺二冠が豊島陣に金を打ち込み王手をかける。ここで豊島玉の逃げ場所は「5二」と「5三」というひとマス違いの2か所。だがこれが「SHOGI AI」的には究極の二択だったのだ。示されたのは「5二玉」なら豊島名人優勢維持、「5三玉」を選ぶと一気にマイナス69%という恐ろしい事態だった。

・将棋界“頂上決戦”で起きた「究極の二択」解説棋士も「正確に指すのは至難の業」という局面での逆転劇

 とは言えこの局面、棋士ですら二択の正解を選ぶのは至難の業なのだという。AIだけが明確に白黒を示す中、豊島名人は「5三玉」を指して勝率は一気に6%まで下落。実際、渡辺二冠はその後、勝率を大きく下げることなく押し切って逆転勝ちを収めた…

 AIによる「形勢判断」や「次の一手」表示が将棋中継の解説にも大きな影響を与えているのは確かだ。担当する棋士は、AIが示した候補手の意味を考え、その解説を迫られることになる。先の名人戦「究極の二択」問題も、かかわった棋士たちは懸命にその意味を伝えようとしていた。

 一方で、AIの数値にとらわれ過ぎないほうが良いという意見ももちろんある。

 「解説の人たちはやっぱり対局者の性格を全部知ってるんで、『この人は絶対こんな手は指さない』って言うんですよね。『絶対にこの3番手、4番手を指すよ』と。で、その通りになるんですよね。AIはそこを読み取れないんです。だからやっぱりそういうのが見ていて面白い」(藤崎氏)

 棋聖戦の第2局。藤井棋聖が守りで打った3一銀という手が、とあるAIでは6億手読んで初めて最善手に浮上する、「AI超え」の一手だと話題になった。

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 実はこの3一銀、「SHOGI AI」では3番目の候補手として当初から挙がっていた。指せばマイナス4%。最善ではないがそれほど悪くない手、という評価だった。

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 「あの後、SHOGI AIで60億手まで読んでみたんですよ、それでも3番手は変わらなかったですね」「でも思ったのは、視聴者はAIが何手考えて候補手を出した、ということに興味あるんだな…ということでした」

 転んでもただでは起きない。「SHOGI AI」では新たに、何手読んだ時点での評価なのかを画面にリアルタイムで表示する機能を開発した。AIがそれだけ読んだうえでの最善手を人間は指すことができるのか?と。

 「SHOGI AI」の進化はそれだけではない。棋聖戦第1局の「詰むや詰まざるや」というクライマックスをヒントに、候補手のうち指したらマイナス90%以上の大悪手を赤文字で表示することにした。時限爆弾を解除しようとコードを切ったらドカンと爆発する、そういうイメージだ。「将棋愛では誰にも負けない」と自負する藤崎氏ならではのアイデアが、「SHOGI AI」をどんどん進化させている。

 では我々視聴者はこれからのAI中継をどう楽しめば良いのか。藤崎氏によると現実の戦いではAI的な0か100かの評価ではわからない人間同士の駆け引きがあるのだという。

 「実はトラップを仕掛けに行くこともあるらしいんですよ、棋士の方が。罠を仕掛けてその罠に落ちるかどうかを見ながら次の局面を進めるというのがあるんです」

 「だからその棋士が最善手を指さなかった場合に、なぜ指さなかったのかを視聴者の皆さんに考えてほしい。AIでは表現できないけど、人間としてその手を指さなかった理由があるのかもしれない、それを考えるのが面白いところではないでしょうか」

 無機質なはずのAIの判断に込められた、思いがけぬほどの“人間味”。個性を持ったAIが形勢を可視化することによって、将棋に詳しくない人までが一喜一憂しながら将棋中継を楽しめるようになった。

 藤崎氏は注目度が高まるからこそ、「SHOGI AI」の精度をより一層上げて正確な情報を伝えていきたいと気を引き締める。今後もさらに進化した表現手法で私たちを楽しませてくれるのだろう。(ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)

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