史上初の冬開催となるカタール・ワールドカップ(W杯)。ヨーロッパのシーズン真っ只中に行われることもあり、出場する選手たちをはじめ多くの関係者のなかに困惑もあるはずだ。

コンディション調整の仕方、シーズンの戦い方、そしてW杯後の戦い方など、それぞれの思惑もあるだろう。

そんな中、23日に国際サッカー連盟(FIFA)が、カタールW杯に向けた新たな変更点を発表。チームの登録人数がこれまでの23名から26名に増加したのだ。

これは新型コロナウイルス(COVID-19)がいまだに終息に向かわないなか、選手たちに感染者が出る可能性も考慮したもの。また、5人交代というルールを継続することから、枠を拡大することとなった。

たった3名と思う人もいるかもしれないが、この3名があるかどうかでは大きくチームの戦略も変わってくる。また、15名がベンチ入りできるということは、ケガや出場停止がなければフルに全員を試合で起用できるという状況なだけに、監督としても幅が広がるはずだ。

そこで、今の日本代表が26名で編成されるとしたらどのような影響があるのか予想してみた。

◆GK3名+各ポジション2名

これまでの23名という枠で考えると、まずはGKに3名、そして残りの20名を各10のポジションに2人ずつという計算になる。

もちろん、違うメンバー構成にするところは多々あるが、考え方としてはレギュラー10名+バックアップ10名ということだ。

日本代表は[4-1-4-1(4-3-3)]と[4-2-3-1]を併用しているが、[4-1-4-1]に当てはめて考えてみたい。

まずGKだが、こちらは別途3枠がある。正守護神である権田修一(清水エルパルス)、3大会に出場している川島永嗣(ストラスブール/フランス)は入る可能性が高い。そして残りの1枠は国によって考え方が違い、若手の枠として考えるか、控えの戦力として考えるかだ。これまでの代表招集の実績でいけば、谷晃生(湘南ベルマーレ)かシュミット・ダニエル(シント=トロイデン/ベルギー)が濃厚。ただ、6月に招集された大迫敬介(サンフレッチェ広島)、U-21日本代表で活躍する鈴木彩艷(浦和レッズ)もいる。残り5カ月の中で決めることになりそうだが、目下7月のEAFF E-1サッカー選手権の出来が重要になりそうだ。

右サイドバックはケガからの回復次第だが、酒井宏樹(浦和レッズ)、山根視来(川崎フロンターレ)、左サイドバックは長友佑都(FC東京)、中山雄太(ズヴォレ/オランダ)が現時点では順当な選出となるだろう。

そしてCBは4名。最近の招集メンバーを見れば、吉田麻也(サンプドリア/イタリア)、冨安健洋(アーセナル/イングランド)、板倉滉(シャルケ/ドイツ)、谷口彰悟(川崎フロンターレ)という構成になると見て良い。

中盤は考え方次第だがアンカーとインサイドハーフで6名という計算。遠藤航(シュツットガルト/ドイツ)、守田英正(サンタ・クララ/ポルトガル)、田中碧(デュッセルドルフ/ドイツ)という最終予選のレギュラー3人に、原口元気(ウニオン・ベルリン/ドイツ)、鎌田大地(フランクフルト/ドイツ)、柴崎岳(レガネス/スペイン)という3名になると予想できる。

前線の3人に関しては、右は伊東純也(ヘンク/ベルギー)、左は南野拓実(リバプール/イングランド)が軸に。そして控えとして堂安律(PSV/オランダ)、三笘薫(ロイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズ/ベルギー)と見て良いだろう。1トップは大迫勇也(ヴィッセル神戸)、浅野拓磨(ボーフム/ドイツ)という序列に感じる。

これが本来の23名の枠で考えた時のメンバー。直近の日本代表活動で招集され、森保一監督の下で長い間プレーしてきたメンバーとなる。順当すぎるという感じだろう。

◆残り3名でチームの幅を広げる

では、ここに3名が加わると考えるとどういう方法論があるのか。単純に考えれば、DF、MF、FWに1人ずつというのがセオリーとも言える。

すでに選んだ8名に加え、DF陣でもう1人加えると考えるなら、伊藤洋輝(シュツットガルト/ドイツ)という選択肢になるだろう。6月に初招集を受けて4試合中3試合でプレー。日本代表に慣れていない中、左サイドバック、センターバックでプレーしたが、高さとフィード能力で一定のパフォーマンスを見せた。

まだまだ連携面や約束事という点では物足りなさはあるが、ドイツに渡って1年目でシュツットガルト首脳陣の予想を良い意味で裏切りレギュラーとしてプレーした能力は十分見せた。複数ポジションができるという点でも望ましいメンバーの1人と言える。

中盤は[4-1-4-1]をベースに考えた6名を選択しているが、[4-2-3-1]となれば1つポジションが空いている。それがトップ下だ。

23名の中で考えれば鎌田、南野、堂安あたりが務めることになりそうだが、ここに割って入るとすれば久保建英(マジョルカ/スペイン)だろう。多くの期待を背負っている久保は、6月のガーナ代表戦でついに初ゴールを記録。3年かけての初ゴールとなったが、残り5カ月のパフォーマンスが重要。現時点で序列は低いが、3枠増えることで選択肢の1つになることは間違いない。どこのクラブに行くのか。選択を間違えず、5カ月でパフォーマンスを上げられることが期待される。

そしてもう1枠が前線。候補としては古橋亨梧、前田大然(セルティック/スコットランド)、上田綺世(鹿島アントラーズ)辺りだろう。いずれもクラブではゴールを量産しているが、代表ではなかなか結果を残せていない。試合に勝ってベスト8を目指すという目標に向けては、点が取れる選手が必要。大迫の状態もこの先わからず、流動的になるだろうが、W杯の時点で一番乗っている選手がベストだろう。この3人以外にもまだまだチャンスがあると言えるだけに、ゴールを量産し続ける選手としておきたい。

◆チーム作りは無駄ではない可能性

ここまで森保一監督は、最終予選ではメンバーをほぼ固定して戦った一方で、6月の4試合はチームのベースアップ、様々な組み合わせによる化学反応を見極める時間に費やした。

新たなポジション、新たな組み合わせで見えてくるものもあり、固定して戦い方を固めた方が良いという意見も理解はできるが、このやり方も間違いではなかったと言える。

枠が3人広がったことで、チームとしてのバリエーションは広げられることになった。ただ3名を追加するというよりも、意図を持って3人追加できる方がプラス。そういった意味では、6月の4試合で見えたものをどうブラッシュアップしていくか。9月の貴重な時間に向けて、26名でのプランニングが必要となる。

ドイツ代表、スペイン代表、コスタリカ代表とどの相手も実力があり、一筋縄で勝てる相手ではないことは承知。ただ、そこを戦略性を持って攻略することは不可能ではない。残り5カ月、選手たちはピッチ上で最高のパフォーマンスを続けること、そして森保監督には26名で完成するパズルを組み立ててもらいたい。
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