日本サッカー協会(JFA)は13日、EAFF E-1サッカー選手権決勝大会に臨むサッカー日本代表メンバーを発表した。

 初招集となった10人の中で、異色のキャリアを歩んできた選手がいる。それは横浜F・マリノスに所属するDF小池龍太だ。

 JFAアカデミー福島で育った小池は、高校卒業のタイミングで当時JFL所属だったレノファ山口に加入。その後、在籍した3年間でクラブとともに毎年1つずつカテゴリを上げでJFL、J3、J2とステップアップしていった。

 2017年に山口から柏レイソルへと移籍し、J1の舞台にたどり着く。2019/20シーズンにはベルギー2部(当時)のロケレンに所属し、欧州でのプレーも経験して2020年夏にマリノスの一員となった。

 マリノスでもチームに欠かせない選手の1人となり、本職の右サイドバックのみならず左サイドバックや、時にはボランチもこなすなど、複数のポジションで高いレベルのパフォーマンスを披露してきた。

 パフォーマンスの安定感が極めて高く、連戦に耐えうる肉体的なタフさを備え、攻撃時は柔軟なポジショニングでビルドアップにも関わる。そして素早い攻守の切り替えで一気に自陣まで戻り、守備でも対人の強さを発揮し、対峙するアタッカーを封殺する。

 こうした能力を地道に積み上げて、JFLから日本代表までたどり着いた。究極の“成り上がり”サッカーキャリアと言えるのではないだろうか。小池は「JFLからキャリアをスタートしてここまでたどり着けたので、まだまだ自分自身ここが終わりだと思っていない。これを機に代表に定着していけるように楽しんでいきたいと思います」と、さらなるステップアップに意欲を燃やしていた。

 また、小池はJFAアカデミー出身者として初の男子A代表選手となった。反町康治技術委員長は「いままでJFAアカデミー出身でアンダーカテゴリの代表はたくさんいますけど、A代表は初めてなので、JFAとして力を入れてきたことが成果として出ているのは喜ばしいこと。みんなの励みにもなるし、選ばれただけでなく試合の中でも活躍していただくことを期待しています」と語る。

 当の小池は「同期やアカデミー卒業生が、まさか僕が最初にA代表に行くなんて思っていなかったでしょうけど、そんな素晴らしいことを成し遂げられたことをすごく誇りに思います」と、大きな一歩を踏み出せたことへの喜びを述べた。多くの同窓生たちが世代別代表などを経験した一方で、小池には世代別代表歴がない。こうした意味でも強烈な“成り上がり”で史上初の快挙を成し遂げたと言える。

「JFAアカデミー生を代表してプレーすることが、今後のアカデミーの活動だったり、これから入ろうと思う選手たちの力になるかなと思う。いろいろな部分で『代表する』ところを、自分の中でしっかりと噛み締めて、プレッシャーはいろいろあると思うんですけど、それを全て楽しみながらプレーしていきたいと思います」

 日本代表でも「自分が証明してきたことをそのままいつも通り取り組めれば」と意気込む小池は、E-1選手権で爪痕を残せるだろうか。チーム内で唯一と言ってもいい、国内組によるサバイバルレースが繰り広げられている右サイドバックのポジションで、カタールワールドカップに向けた競争を大いにかき乱してもらいたい。

(取材・文:舩木渉)