■9月の欧州遠征はカタールW杯の”事前キャンプ”

 9月の欧州遠征に挑むサッカー日本代表のメンバーが、近日中にも発表される。ドイツで活動するチームは、23日にアメリカ代表と、27日にエクアドル代表と対戦する

 カタールワールドカップ前最後となる活動を、森保一監督は事前キャンプのように位置づけている。W杯の登録人数26人を上回る30人を招集し、コンセプトの確認と浸透をはかる。

 7月のE―1選手権では、国内組がアピールした。即興チームで9年ぶりの優勝をつかみ取り(森保監督にとっての初タイトルでもあった)、海外組不在のなかでカタール行きへ望みをつなげた。

 存在感を示したひとりが、FW町野修斗である。湘南ベルマーレに所属する22歳は、相馬勇紀とともに大会得点王に輝いたのだった。

 カタールW杯出場の期待が集まる町野に、現在の思いを聞いた。(#1、2のうち2)

【湘南・町野修斗インタビュー】ベルマーレが他J1クラブに「絶対に負けないところ」、日本代表入りの「手ごたえ」を直撃!「意気込みはもちろん100パーセントです」【欧州遠征直前】(#2)
Zoomでのインタビューに応える町野選手。時折笑顔を交えながら熱く語ってくれた

■日本代表入りで芽生えた「責任感」

 7月のE-1選手権で日本代表に招集されたことは、町野に精神的な変化を促した。

 表情がグッと引き締まる。

「やっぱり責任感はあります。日の丸というものを背負ったことで、周囲の見る目もかなり変わりましたし。山口(智)監督からも、チームにいい影響を与えてほしいと言われているので、そこの責任感は出てきました」

 責任感がプレッシャーへ変質することはないのだろうか。9月30日に23歳になるアタッカーは、「そこは大丈夫です」とすぐに答える。

「プレッシャーがないと、逆にダメなタイプなので。そうやって生きてきたつもりなので、プレッシャーがあればあるほどいいのかな、と思っています」

 横浜F・マリノスでのプロ1年目は、公式戦に1試合も絡めなかった。翌年はJ3の北九州へ期限付き移籍し、チームトップの8ゴールをマークした。北九州に完全移籍した2020年はJ2で7ゴールを記録し、湘南への完全移籍を勝ち取った。ゴールを決めることで、キャリアアップを実現してきた。

「背水の陣じゃないですけれど、追い詰められたときに力を発揮する自信はあります。自分にもっとプレッシャーをかけてもいいのかな、と思います」

 プレッシャーをエネルギーに変えていく町野は、チームにとって頼もしい存在だ。J1残留を早い段階で確定させ、順位をひとつでも上げていくためには、背番号18のゴールが不可欠だからである。

「8月21日の鹿島戦で湘南らしい戦うところ、ハードワークするところは、いままで以上に見せることができた。勝点は1しか取れなかったですけど、そういった熱いものを出すことができて、ここから勝っていくという自信が出てきました」

 9月3日に行なわれた川崎F戦は、湘南らしさが発揮された一戦だった。試合前の段階で首位に立つ相手に、臆することなく立ち向かっていく。前半に先制されたものの、町野が自らつかんだPKを決めて同点とする。さらに90+3分、阿部浩之の決勝弾で2対1の勝利をつかんだのだった。

「相手より走るところ、戦うところ、気持ちで絶対に負けないところは、毎試合見せることができていると思います。去年も苦しいところから、J1残留まで持っていけました。僕らはものすごくうまくはないかもしれないですけど、必死に戦うところを出していきたいし、そこは湘南が他のチームより優っているところだと思います」

【湘南・町野修斗インタビュー】ベルマーレが他J1クラブに「絶対に負けないところ」、日本代表入りの「手ごたえ」を直撃!「意気込みはもちろん100パーセントです」【欧州遠征直前】(#2)
「相手より走る、戦う、気持ちで絶対に負けない」湘南のチームメイトと一丸となって勝利を目指す (C)SHONAN BELLMARE

■メンバー入りへの意気込みは「もちろん100パーセントです」

 9月7日時点での9ゴールは、J1のランキング4位タイだ。日本人選手では上田綺世(現サークル・ブルッヘ)に次いで2位である。

 カタールW杯のメンバー入りへの手ごたえを、数字で表わすとどうなるか。町野は「それはちょっと難しいですね……」と腕を組み、「意気込みはもちろん100パーセントです」と切り出す。

「僕の実力というか、結果次第で可能性があるところにいると思うので、W杯は狙っていきたいとつねに思っています。そのために、Jリーグで結果を残していかないと。チームのために点を取って、それが9月の欧州遠征に選ばれることにつながれば、と思います」

 E-1選手権では4-2-3-1の1トップを務めたが、日本代表は4-3-3を基本布陣としている。「3トップならCFがいいと思います」と町野は語るが、ウイングにも対応できそうだ。

「足元の技術は多少あるので、挑戦してみたいポジションでもあります」と、本人も控え目に話す。

 4-2-3-1のサイドにも、適応できるのではないだろうか。モデルとなるのはアルベルト・ザッケローニ指揮下の岡崎慎司だ。2列目のサイドを基本ポジションとしながら、クロスボールに対してゴール前へ飛び込んでいく。ディフェンスでもハードワークできる町野なら、1トップだけでなくサイドでの起用も見込めるだろう。

「北九州のときは1・5列目ぐらいでやっていましたし、できないポジションではないですし、使われればやれる自信はあります。守備はあまり得意ではないですけれど、北九州でも求められていましたし、湘南でももちろん求められるところなので、そこを出せればいいかなと思っています」

【湘南・町野修斗インタビュー】ベルマーレが他J1クラブに「絶対に負けないところ」、日本代表入りの「手ごたえ」を直撃!「意気込みはもちろん100パーセントです」【欧州遠征直前】(#2)
左右両足が使え、サイドでも活躍が見込める  (C)SHONAN BELLMARE

■「万能型」の町野が代表で生きる道とは?

【湘南・町野修斗インタビュー】ベルマーレが他J1クラブに「絶対に負けないところ」、日本代表入りの「手ごたえ」を直撃!「意気込みはもちろん100パーセントです」【欧州遠征直前】(#2)
おなじみとなった「忍者ポーズ」  (C)SHONAN BELLMARE

 すっかりお馴染みとなった「忍者ポーズ」のゴールパフォーマンスは、生まれ故郷への思いをきっかけとしている。三重県伊賀市は「忍者の里」として知られており、「地元の人たちが喜んでくれたら」と始めたものだ。

「地元には家族がいますし、顔見知りの人もたくさんいます。応援してくれる人、連絡してくれる人もたくさんいるので、その人たちのために頑張りたいという思いがあります」

 インタビューの最後に、かなり強引な質問をしてみた。

「伊賀忍者と町野選手のプレーにつながりはありますか?」と聞く。町野は「忍者ですか……?」と困惑の表情を浮かべつつ、「ううん」とうなりながら答えをひねり出してくれた。

「マークを外すところですね。忍法隠れ身の術で(笑)」

 日本代表の前線を見渡すと、町野は独自の立ち位置にいる。

 最前線で起点になる大迫勇也や上田綺世とも、背後への抜け出しを得意とする古橋亨梧や浅野拓磨らとも、一緒に分類されることはない。大阪・履正社高校の先輩でもある林大地とも、プレースタイルは違う。

 本人が言うとおりに「万能型」だ。ゴールパターンが多彩なだけでなく、複数のポジションに適応する期待感もある。

 あとは、町野自身が結果を残していくだけだ。「忍者ポーズ」を見せるほどに、カタールW杯は近づいてくる。

プロフィール まちの・しゅうと 1999年9月30日生まれ、三重県伊賀市出身。湘南ベルマーレ所属のFW。185センチ、77キロ。履正社高校から横浜F・マリノスに入団。2019年ギラヴァンツ北九州に期限付き移籍。J3リーグで8ゴールを挙げチーム得点王に。2020年1月、北九州に完全移籍。J2リーグで7ゴールを記録し、同年12月に湘南ベルマーレに完全移籍を果たす。2022年7月に行なわれたEAFF E―1サッカー選手権2022でサッカー日本代表に初選出され、3得点を決め、大会得点王に輝く活躍で日本を9年ぶりの優勝に導いた。