9月下旬のドイツ遠征に参加する日本代表のメンバーが発表された。今回の遠征は、2か月後に迫るワールドカップの開幕前、最後の準備期間となる。カタールの地で躍進するために、この貴重な機会をいかに活用すべきなのか、ベテランのサッカージャーナリスト、大住良之と後藤健生が激論を交わした。
■右サイドバックはハイレベル
――今回のメンバーに入ってよかった、という選手はいましたか。
大住「酒井宏樹だね。今回は無理だと思っていたら、メンバー発表前日にいきなり出てきて、大暴れしていた。プレーの精度は低かったけどね」
後藤「ACLでも頑張っていたよ。でも今の右サイドバックの選手では、山根視来が急成長していてすごい。ハイレベルの争いだよ」
大住「ドイツなんて、ウィングにはとんでもなく速くて個人技がある、という選手がいるから、対抗するには酒井くらいのモンスターがいないとちょっと厳しいかもしれない」
後藤「相手のモンスターに対抗するには、モンスターをぶつけるしかないね。そのためにずっとフランスでやっていたんだから。フランスにいるのは、そんな選手ばかりだもんね」
大住「相手が個人技で勝負する選手になればなるほど、酒井は強みを発揮するよ。Jリーグでパパパッとパスを回してくる相手にはオタオタするけどね」
後藤「パスを回してくる相手には、山根をぶつければいい」
■初戦にベストメンバーをぶつける
大住「左サイドバックでは、伊藤洋輝は6月の試合ではとても良かったし、クラブでは今、3バックの左で試合に出ているね。伊藤は28番をつけているけど、背番号が27番以降の選手を見ると、試合に出るチャンスがどのくらいあるか疑問だな。瀬古歩夢は背番号4だけど、板倉滉の代わりに呼ばれた、というのは明らかだしね。森保一監督は板倉も浅野拓磨も大迫勇也も、ワールドカップに間に合うと言っていると話していたけど、ひざの靭帯を9月に痛めて11月はきついと思うけどね。選手生命に関わるから、クラブは絶対に手術をさせて来年の春に戻ればいいと考えていると思うけどね」
後藤「浅野は手術をしないで、保存療法にするという話だよ。靭帯の個所や状態によっても、考え方は変わってくるだろうね」
――今回の2試合は、どのような使い方をすればいいでしょうか。
大住「ケガ人も出たり、調子に差がある状況だから、できるだけ多くの選手を使いたいだろうと思うんだよね。だから、アメリカ戦にベストのメンバーをぶつけて、エクアドル戦はガラッと変えると思うんだけど」
後藤「そりゃあ、2試合でいろいろな選手を使って、いろいろな組み合わせを試さないといけないよね。ただ、どの顔ぶれがベストメンバーなのか分からない。まずは集まってからコンディションを確かめて、状態が良い選手からアメリカ戦で使ってみる。それしかないよ」
大住「所属クラブでのパフォーマンスを見れば、だいたい見えてくるけどね」
後藤「ただ、集まる直前の試合でどうなるか分からないよ。そこで何分間プレーしたか。強いて言えば、アメリカが仮想ドイツで、エクアドルがスペインかと思うけど、その点はあまり意識してもしょうがないかな。そんなことを考えるより、自分たちのことを考えた方がいいかなともう」
■欧州VS「その他の世界」
大住「とにかく、アメリカと試合できることになったというのは、素晴らしいよね。現時点でヨーロッパ以外のチームで考えられる、ヨーロッパ的なベストの対戦相手かもしれない」
後藤「ヨーロッパ的だね。南米のチームとはこれまでたくさん試合をしてきたけど、ヨーロッパ勢は他の大陸と試合をしてくれないからね。ヨーロッパ以外の大陸のチームが、ヨーロッパを倒すために力を合わせればいいんだよ。欧州以外の4大陸で大会をつくって、ヨーロッパを倒すために頑張ればいい。本当はヨーロッパのチームにとっても、他の大陸のチームと試合をしていないというのはワールドカップでは不利に働くと思うけどね」
大住「それは良い意見だ。今年に入ってからの後藤さんの意見の中で、一番良かったかもしれない」
後藤「他の大陸のチームとやった方が、彼らのためにも良いと思うよ。ヨーロッパ以外知らないから、“えっ、こんなこともするの?”と驚いて、コロッとやられちゃうかもしれない」
大住「今回のワールドカップでは、そうなってほしいね。その上で、反省してほしい」