9月16日に発表されたUEFAネーションズリーグに臨むスペイン代表メンバーで、もっとも驚きを持って伝えられたニュースのひとつが、アンス・ファティの落選だ。
アンス・ファティの現在のバルセロナでの立ち位置は、左ウイングの2、3番手。しかしルイス・エンリケ監督は6月の代表戦で、出場機会を与えない中でも、この故障明けのストライカーの招集に踏み切っていた。これはワールドカップを見据えてチームに適応させる措置に他ならなかったが、今回は選考外にした理由を、次のように述べている。
「ここまで(バルサで)スタメン出場したのは1度だけだ。それが私に何かを語っている。現時点でメンバーに入る状態にあるとは思えない」
夏の大型補強を経て、グレードアップを遂げたバルサの攻撃陣は、故障明けでまだベストコンディションにはない未来のエースを、無理して起用する状況にはない。
ましてや昨シーズン、コンディションが整わないまま新エースの重責を背負わせ、故障を誘発した部分もある。シャビ監督が起用に慎重になるのは当然だろう。実際、ここまでに消化した全8試合の公式戦のすべてに出場しているとはいえ、うち7試合は残り30分を切ってからの“試運転”的な起用となっている。
しかし、W杯での覇権奪回をめざすルイス・エンリケ監督としては、コンディションに不安を抱える選手をいつまでも待っているわけにはいかない。完全復活を期待していたがそうはならなかった——指揮官がそう判断したことが、今回の落選の真相だろう。
前線の決定力不足が深刻なスペイン代表において、アンス・ファティの存在価値は高い。健康体であれば、メンバー入りはもちろん、チームの展望を大きく開かせるほどの能力を持っている。
W杯の開幕まで残り2か月。4度の膝の手術を経て自身初の大舞台をめざすアンス・ファティだが、残された猶予は少なくなってきた。
構成●ワールドサッカーダイジェスト編集部
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