■エクアドル相手のアピールは難しかった

 ピッチに立った選手たちは、複雑な気持ちだったかもしれない。与えられた環境のなかでパフォーマンスを発揮するには、9月27日のエクアドルは紛れもない難敵だったからだ。

 サッカー日本代表は23日のアメリカ戦に続いて、4-2-3-1のシステムで臨んだ。スタメンは総入れ替えで、アメリカ戦よりテスト的要素が強かった。一人ひとりが特徴を発揮することも、チームとして気のすることも簡単ではない。

 果たして、激戦の南米予選を2大会ぶりに勝ち抜いたエクアドルに、序盤から主導権を握られた。相手のプレー強度の高さや切り替えの速さは、スカウティングで想定できたはずだ。しかし、コンビネーションの練度が低いために組織で対抗することが難しく、局面のバトルでの劣勢がそのまま試合展開に反映されてしまう。トルコ・フェネルバフチェに所属する主砲のエンネル・バレンシアがベンチスタートでも、エクアドルはクオリティが高かった。

 アメリカ戦のように、前線からのプレスを効かせたい狙いはあっただろう。しかし、ふたりのCBとアンカーの3人でビルドアップするエクアドルは、自陣からボールをつなぎながらも中長距離のパスを使ってきた。前線から規制をかけきれず、球際の攻防で上回れず、前半は劣勢を強いられた。

 後半は選手交代をきっかけに押し戻したものの、決定機なシーンを生かすことができない。75分過ぎにはPKを与えてしまうが、GKシュミット・ダニエルがドンピシャの反応で防いだ。

 最終的には0対0で終了のホイッスルを聞いた。コンディションのいい相手との対戦から、見えてくるもののあった一戦だった。ヨーロッパでプレーする意味を感じることのできた試合でもあり、選手のプレーをチェックするのにエクアドルは申し分のない相手だった。

■長友がエクアドル戦で猛アピール

 今回のドイツ遠征には、30人が招集された。ポジションごとの最新序列が見えてきた。

 GKはアメリカ戦に先発した権田修一が、これまで同様にファーストチョイスに近い。ただ、シュミットも好印象を残した。アメリカ戦では後半から出場し、高精度のキックでカウンターのきっかけを作った。エクアドル戦では、PKストップ以外にも決定機を阻止している。

 足元に優れるシュミットは、相手のプレスを回避する行き先になれる。そもそも権田との間に絶対的な差はなく、スタメンが入れ替わっても不思議ではない。

 第3GKは不透明だ。チームを支えるひとりとしての川島永嗣か。次のW杯へつなげる選考としての谷晃生か。どちらを選んでも理由はある。森保監督の選択が注目されるところだ。

 DFラインでは、経験者が改めて評価を上げた。アメリカ戦の酒井宏樹とともに、エクアドル戦で長友佑都が好パフォーマンスを披露した。1対1でのしっかりとした対応と相手を先回りしたカバーリングは、最終予選での物足りなさを払拭するものだったと言っていい。

 守りの時間帯が長かったエクアドル戦は、W杯本大会でのドイツ戦やスペイン戦につながる。大舞台に強さを発揮するメンタリティを含めて、長友は自らの存在価値を証明した。

 左SBでは、中山雄太と伊藤洋輝も起用されている。中山は3バック時の左ウイングバック、伊藤は左CBでも起用された。3バックがオプションになることを念頭に置くと、左サイドは長友を加えた3人態勢か。

 CBはアメリカ戦でコンビを組んだ吉田麻也と冨安健洋に加え、エクアドル戦で谷口彰悟もアピールした。PKこそ献上したものの、的確なカバーやシュートブロックでチームを助けた。守備の局面でもビルドアップでも、臨機応変に対応できるのは彼の大きな強みだ。

 今回のメンバーには瀬古歩夢も招集されていたが、出場機会は与えられなかった。吉田、冨安、谷口に伊藤を加えればCBは4人になり、今回は招集されなかった板倉滉が復帰すると5人になる。

 さらに右SBで酒井と山根視来を選ぶと、長友と中山を加えてDFが9人になる。ドイツ戦やスペイン戦は守備の時間が長くなることが想定され、DFの負担が増すことが考えられる。23人では8人が多かったが、26人なら疲労を分散するために9人でもいい。

 あるいは、右SBに長友と冨安も対応できる前提で、山根を選外として8人にするか。DFを8人にすると、1枠をMFかFWに充てることができる。森保監督がどのように考えるのか、だ。