日本代表は、ワールドカップメンバー選考前最後となる準備期間「ドイツ遠征」を終えた。実りある時間となったが、同時に日本が本大会で対戦するチームも準備を進めている。ドイツ、スペインという強敵が相手だが、サッカージャーナリスト・後藤健生の目には今回の準備期間では突破口も見えてきた。グループステージを突破し、まずはラウンド16へ到達するのに必要なものとは――。

■完璧だったアメリカ戦

 日本代表にとってワールドカップ開幕前の最後の準備試合がドイツ・デュッセルドルフで行われた。

 初戦のアメリカ戦では前田大然を先頭に前線からプレスをかけ続けたため、アメリカはパスをつなぐことができず、90分間にわたってほぼ日本がゲームをコントロールして2対0で快勝した。試合の流れを見ながら時間帯によってプレスのかけ方を変えるなど、かつてないほどの完璧な勝利だった(早めに2点目を奪えていればパーフェクトだった)。

 しかし、ワールドカップ本番と同様に中3日で戦ったエクアドル戦では日本が先発11人全員を交代させたため、苦しい試合となってしまった。

 前からプレスをかけにいっても、エクアドルはそのプレスをかいくぐってボールをつなぐ技術を持っていたし、ロングボールも織り交ぜられ、またセカンドボールを拾われて再三のピンチを招いてしまった。日本はなんとかエクアドルの攻撃に耐えながらカウンターでいくつかのチャンスを作っただけ。後半にはPKを取られる場面もあったが、これはGKのシュミット・ダニエルが止めてなんとか引き分けに持ち込んだ。

■プレスが効かなかった第2戦

 エクアドル戦は、ワールドカップ本番でもありそうなヒリヒリとした試合だった。

 苦戦の原因は先発11人をすべて変えたことに尽きる。当然、ファーストチョイスの選手に比べてコンディション面も含めて能力は落ちるし、初めて組む選手も多いのでコンビネーションも悪い。

 むしろ11人を変えたのにこれだけの試合ができたことを賞賛すべきだろう。ワールドカップ本番では数人ずつターンオーバーしながら戦っていけるメドが立ったと言える。また、苦しい展開の中で後半からワントップに入った上田綺世がなんとかターゲットとして機能したことは明るい材料だった。

 この2試合から見えてきたのは、日本の前線からのプレスが効くかどうかが勝敗の分岐点になりそうだということ。

 ただ、アメリカのように中途半端につないでくる相手であれば日本のプレスが効いてゲームをコントロールできるが、エクアドル相手にはプレッシングは有効でなかった。日本チーム側の問題もあったが、プレスのかけやすい相手とそうではない相手があるのは間違いない。

 ドイツやスペインを相手に、アメリカ戦のように簡単に90分にわたってプレスが効くとは思えない。プレスが効かない場合にはどのように戦うのか。プランB、プランCを用意して戦わなければならないだろう。

■本調子ではないライバルたち

 さて、日本代表がデュッセルドルフでアメリカ、エクアドルと戦っている期間に世界中で多くの国際試合が行われていた。

 日本が第2戦で対戦するコスタリカは韓国に遠征。韓国とは2対2で引き分け、その後韓国国内でウズベキスタンと戦った試合ではウズベキスタンに先行されながらも、後半のアディショナルタイムに2点を奪って逆転勝利。相変わらずの粘り強さを発揮した。

 一方、日本が初戦で対戦するドイツ代表はUEFAネーションズリーグのグループリーグでハンガリー、イングランドと対戦したが、ホーム・ライプツィッヒでのハンガリー戦を0対1で落として決勝ラウンド進出の可能性は消滅。さらに、敵地ウェンブリーに乗り込んで行われたイングランドとの最終戦では、後半に2点を先行しながらゲームをコントロールできずにイングランドに逆転を許してしまった。最終的にはセルジュ・ニャブリのミドルシュートをイングランドのGKニック・ポープがファンブルしたところをカイ・ハヴァーツが押し込んで同点に追いついて敗戦は逃れたものの、その不安定さを露呈した。

 また、日本が第3戦で対戦するスペインも同じくUEFAネーションズリーグのグループリーグでスイスと対戦したが、ホーム・サラゴサでの試合に1対2で敗れてグループ2首位の座を明け渡してしまった。

 アウェーのポルトガル戦ではスコアレスドローかと思われた最終盤の88分にアルバロ・モラタが決勝ゴールを決めてなんとか勝利。ファイナル4進出を決めはしたが、得点力不足は相変わらず。ポルトガル相手に68%のボール保持率を記録したものの、なかなかゴールに近づくことができず、カウンターから何度もピンチを招いていた。

 つまり、現段階でのファーストチョイスのメンバーで戦ったアメリカ戦で非常に良いパフォーマンスを見せた日本と比較すると、ドイツ、スペインはともに本調子とはほど遠い状態にあるのだ。

 では、この両国に対して日本代表はどのように戦うべきなのか。ドイツ、スペインの9月シリーズの2試合を見ながら、日本代表のワールドカップでの戦い方を考えてみたい。