日本代表は、ワールドカップメンバー選考前最後となる準備期間「ドイツ遠征」を終えた。実りある時間となったが、同時に日本が本大会で対戦するチームも準備を進めている。ドイツ、スペインという強敵が相手だが、サッカージャーナリスト・後藤健生の目には今回の準備期間では突破口も見えてきた。グループステージを突破し、まずはラウンド16へ到達するのに必要なものとは――。
■日本のプレスは有効か?
まず、ドイツに対しては、日本がアメリカ戦のようなプレッシングを仕掛けることは十分に可能だ。
もちろん、ドイツの最終ラインから中盤や両サイドに付けるパスは、アメリカよりも正確でパス・スピードもあった。しかし、9月の2試合でドイツと対戦したハンガリーもイングランドもハイプレスは仕掛けていなかった。
たしかに、ハンガリーは前線からチェックには来ていたが、ドイツの選手の前に立ち位置を取ってパスコースを限定するだけでボールを奪いに行ったわけではない。また、イングランドに至っては、最初から自陣に構えてブロックを作って守り、ドイツを引き込んでカウンターを仕掛けることを狙っていた。
従って、プレッシャーの少ない中でのプレーなのでドイツの最終ラインからMFにつなぐパスが正確で速いのは当然のことだった。日本がアメリカ戦で見せたようなハイプレッシャーを繰り返せば、ドイツのパスを分断することは十分に可能だ。
■ドイツの問題は中盤からのパス
また、ドイツ代表のDFラインからMFへのパスはそれほどバリエーションがなく、ある程度パターン化できる。従って、ドイツの最終ラインがMFのヨシュア・キミッヒやイルカイ・ギュンドアンに預けるパスを予測してインターセプトを狙うこともできるのではないだろうか。
ドイツ代表の大きな問題点はMFから前線へのパスはタイミングが遅く、コンビネーションも良くないことで、パスコースを探しているような場面も見かける。それなら、前線でのハイプレスが効かない場合には、ボランチのキミッヒやギュンドアンがボールを持ってパス回しが滞ったところを狙うことも可能かもしれない。
ドイツはハンガリー戦ではトップにティモ・ヴェルナーを置き、トップ下はトーマス・ミュラーだった。一方、イングランド戦ではハヴァーツがトップで、トップ下はジャマル・ムシアラ。そして、イングランド戦ではムシアラ、ハヴァーツが中盤に下りてきて、パスを引き出すことでパスコースは多彩になっていた。
いずれにしても、ドイツのボールの運び方にはそれほど多くのバリエーションがあるようには見えないので、狙いをもって守備をすれば比較的高い位置でボールを奪うことは可能だろう。
■ドイツ代表の怖い形
しかし、ドイツのサッカーといえばカウンタープレスの本場でもある。ドイツ自体が高い位置から仕掛けてくることは間違いない。たとえば、イングランド戦ではGKのポープに対してドイツの選手がプレスをかけてイングランドの守備陣に混乱をもたらす場面が何度かあった。
そして、ドイツのプレッシングに苦しみながらも、イングランドはそのプレッシングをかいくぐってボールを持ち出した時にはカウンターで何度かチャンスを作れていた。ハンガリーも、やはりドイツがプレッシングを仕掛けてくる逆を取って両サイドの選手を走らせることでチャンスを作り、そして1点を奪って勝利に結びつけた。
日本とドイツの戦いは両チームがカウンタープレスをかけ合う激しい試合になるだろう。そして、どちらがより有効にプレッシングをかけられるのか。そして、どちらが相手のプレッシングをかいくぐって攻撃に繋げられるのかの勝負になるだろう。
また、ハンガリー戦のドイツは後半はDFのティロ・ケーラーを入れてスリーバックに変更。右SBのヨナス・ホフマン、左SBのダヴィド・ラウムのポジションを上げてウィングバックとして、ミュラーをターゲットにしてアーリークロスを入れてきた。
1点をリードしたハンガリーが引いて守ったからの変更だったが、日本としては実はこの形がいちばん怖いのかもしれない。CBの吉田麻也、冨安健洋に加えて、サイドバックにもヘディングの強い酒井宏樹、伊藤洋樹を起用して守ればそう簡単に競り負けるとも思えないが、やはり空中戦では日本が劣勢なのは間違いない。