元日本代表監督の西野朗氏が、10月1日に公開された元日本代表MFの鈴木啓太氏のYouTubeチャンネルにゲスト出演。日本がベスト16に進出した2018年のロシア・ワールドカップ(W杯)直前の監督就任から、本大会のグループステージまでを振り返った。

 2015年までJリーグで監督を務めた西野氏は、日本サッカー協会(JFA)からの誘いを受け、「(ロシア・)ワールドカップまでサポートできるかなという感じで」16年に技術委員長に就く。様々な面でチームをサポートしていたが、W杯の2か月前に前任者のヴァイッド・ハリルホジッチ氏の解任に伴い、日本代表監督に就任した。

 本番までわずかな時間のなか、西野氏は欧州組への面接を実施。監督交代への理解と「『お前が必要なんだ』というところを伝える行脚」に務めた。

 鈴木氏から監督就任時にメンバーを決めていたかと問われると「決まっていない。面接も含めて、その時の状況も確認して」とし、ハリルホジッチ氏がリストアップしていた選手とは「半分以上は違ったかもしれない」と明かす。「(グループステージで敗退した前回の)ブラジル(W杯)の雪辱をしたい共有が高い選手を選んだ」という。

 迎えたロシアW杯初戦、ブラジル大会では1-4で敗れたコロンビアに2-1で勝利した。開始直後に得たPKで6分に先制する。「ハリルホジッチ氏が伝えていたダイレクトなプレーがやっぱり、準備していた数年間が要所で活きている」うえに、「アタックの意識で入っていけ」とメンタル面の意識づけを行なっていた。

 39分に追いつかれた後のハーフタイムでは、選手から「1-1でも良い」という声も聞こえた。そこで西野氏は「勝ち切らないといけない試合なんだ」と伝えたという。その結果、73分に大迫勇也のゴールで勝ち越す。「チームの重心が後ろ向きじゃない戦い方をできたと思う」と振り返った。

 続くセネガル戦では、1-2で迎えた78分、その数分前に投入していた本田圭佑のゴールで追いついた。西野氏は本田に、大会前に途中出場で起用すると伝えていたという。

 そして、グループステージ突破がかかった3戦目のポーランド戦には、先発6人を入れ替えて臨んだ。鈴木氏に意図を問われると、西野氏はこう答えた。
 
「ベスト16を勝ち抜くための戦術。メンバーを変えるリスクはあるけど」「とにかく全員でグループステージに臨むんだ」「温存したいという思いではなく、チーム力を出したい」

 だが、思うような試合ができず、59分に先制される。負けている状況下で、西野氏は本田を交代メンバーとして呼んでいた。ただ、同時刻に行なわれていたセネガル対コロンビア戦の経過から、日本は0-1のまま終われば決勝トーナメントに上がれる状況が生まれており、そのことをコーチだった森保一と手倉森誠から伝えられる。

 それまでは攻撃サッカーを貫いてきた西野氏が、ひとつの決断を下す。

「あの時だけは、なぜか知らないけど“降りてきた”」

 西野氏は本田でなく、長谷部誠を投入。日本代表は、負けているのに攻撃を仕掛けずにボール回しに徹した。そして無事、0-1のまま試合を終わらせ、他会場でも動きはなく、2大会ぶりの決勝トーナメント進出を決めた。

「ベスト16、ベスト8に対する意識が、コロンビアに勝った時に持てると思ったから。ベスト16で敗れない戦い方に持っていけるんじゃないかと思うなかで、戦略的なものが変わっていった」と振り返った。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部

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