ついにカタール・ワールドカップに臨む日本代表のメンバー26人が発表された。

 全体的に見れば、ほとんどサプライズのない順調な選考だったと言えるのではないか。

 後ろのポジションは経験豊富な実力者で固めて、前のポジションは勢いがある若い選手のフレッシュなプレーでバランスを取っている。スピードのある選手たちの攻撃がイメージできる。森保一監督らしい一体感のある堅守速攻のサッカーを展開したいというコンセプトが見てとれる。

 強いてサプライズを挙げれば、原口元気の落選だろうか。森保監督は「ユーティリティのある経験者ではなく若手のフレッシュな野心にかけた」といった表現を会見でしていたが、一番悩んだところだったのは容易に想像がつく。

 その理由は後述するが、特に前線にポストタイプではなく、スピードのある浅野拓磨、前田大然の2人が入ったのは、「堅守速攻」の表われだろう。

 日本が戦うグループステージでは、ワールドカップ優勝国のドイツ、スペインがいて、コスタリカだって2014年ブラジル大会でベスト8に入った強豪国だ。日本も力がついてきたとはいえ、堅守速攻型のコスタリカとは似たタイプだが、ドイツとスペインに対しては、どうしても主導権を握られてしまう可能性が高い。

 6月の欧州ネーションズリーグのドイツ、スペインを見ても、その傾向は明らかだ。
 
 例えば、ドイツはイタリア、イングランド、ハンガリーと対戦し、およそ65%のボール支配率をマークしていた。スペインの場合も、ワールドカップ予選でおよそ65~70%という驚異的な数字を叩き出している。これはドイツと並んで参加55か国中トップの数字である。

 ドイツやスペインが誇るボール支配率「65%」は、もちろんリスペクトすべき数字だが、それを打ち破ることが、今回のワールドカップのミッションではない。

 ドイツとスペインとの対戦では「ほとんどの時間で相手にボールを握られる」と仮定し、スピードのあるFWを揃え、その爆発力を活かしたいと選んだはず。

 さらに言えば、このメンバーは、森保監督が9月のドイツ遠征で話していた「ターンオーバー」を十分に考慮した人選だ。ゴールキーパーを含め、それぞれのポジションに「最低2人」は選ばれているのは当然として、「リードしている状況だった場合」「1点を奪いに行きたい状況の場合」といった具体的なメンバー交代を何度もイメージしたと想像できる。

 同じメンバーで勝ち上がることができるほど甘くはないし、むしろターンオーバーを活かした総力戦で突破口を見出したいと考えるのは当然と言える。
 
 勝負のポイントはターンオーバーのタイミングだ。2戦目にするのか、3戦目にするのか。初戦のドイツ戦に負ければ、当然2戦目のコスタリカ戦は勝点3を奪いに行く必要があるから、そのままベストメンバーで臨むだろう。ドイツ戦に勝った場合や引き分けた場合は、コスタリカ戦でターンオーバーするのかどうか。

 理想はドイツ、コスタリカに連勝し、3戦目のスペイン戦でターンオーバーで全ての選手を使い、フレッシュな状態でノックアウトステージに進出すること。いずれにしてもグループステージの状況に応じて対処しなければならないわけだから、森保監督やコーチングスタッフらの頭を悩ませる。

 グループステージを突破する可能性を高めるためには、やはり初戦のドイツ戦で勝点1は奪いたい。

 選ばれた26人のメンバーすべての選手がベストコンディションということを前提にドイツ戦のスタメンを選ぶとしたら、次のようになるのではないか。

 ゴールキーパーはシュミット・ダニエル、4バックは左から伊藤洋輝、冨安健洋、吉田麻也、酒井宏樹。ダブルボランチは守田英正と遠藤航、2列目は左から久保建英、鎌田大地、伊東純也。そして1トップは浅野を予想する。

 もっとも、この11人はあくまでスターティングメンバーに過ぎない。試合状況により交代枠をフル活用し戦う。例えば、1点を奪う必要があれば、「堂安-三笘」をセット起用する。逃げ切りたいなら、板倉をセンターバックに加え2枚から3枚にする。あるいはボランチに入れるなど、クローザーとしての投入も考えられる。

 より攻撃的にしたい場合は、ディフェンスラインを伊藤-冨安-吉田の3枚にして3-4-3に変更。右は酒井(または伊東)をウイングバックとし、左は相馬勇紀を起用することも予想される。

 点を奪いたい時のファーストチョイスは「堂安-三笘」になるだろうが、2トップにしクロスを多用したい場合の両サイドの選手起用を考えた時、左の攻撃的なバックアッパーとして相馬を選んだはずだ。原口の落選は残念であるが、戦術的な理由による苦渋の選択だろう。
 

 ベスト8の鍵を握るのは、いかにして得点を奪うかになる。やはりトップ下の鎌田の活躍は外せないだけに、ブンデスリーガでの好調を維持しゴールを重ねてもらいたい。

 ドイツ、スペイン相手に押し込まれる展開が予想されるなかで勝機を見出すためには、セットプレーも重要になる。そのキッカーとしても鎌田に期待がかかる。

 その他には組み合わせとして魅力的な「堂安-三笘」をどのタイミングで起用していくかにも注目している。森保監督がどんな選手起用をするのか楽しみだ。

 まずは本大会に向けて全ての選手が怪我なくベストコンディションでその日を迎えてほしい。

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