11月1日、カタールワールドカップ(W杯)に臨む日本代表のメンバー26人が発表された。FW大迫勇也やMF原口元気が呼ばれなかったことやW杯経験者が少ないことなど、メンバー選考はさまざまな観点で話題となっている。

 今回は、1998年のフランス大会にも出場した経験を持つ元日本代表FW城彰二氏に、森保一監督の意図を分析してもらった。

【プロフィール】城彰二 じょう・しょうじ 
1975年、北海道生まれ。鹿児島実業高校サッカー部を卒業後にジェフユナイテッド市原(現:ジェフユナイテッド市原・千葉)へ入団。デビュー戦から4試合連続ゴールを挙げるなど、ルーキーイヤーから大きな注目を浴びた。1996年のアトランタ五輪や1998年のフランスW杯では前線の主軸としてプレーし、日本代表としても豊富なキャリアを誇る。2006年に現役を退いてからは解説業を軸に活躍。2020年11月よりYouTubeで『JOチャンネル』を開設し、自身の経験をもとにした動画を配信するなど、多岐にわたる活動で日本サッカーの発展に貢献している。

■大迫の選外で見えた本戦での戦術

 今回呼ばれなかった選手の中で最もインパクトが大きかったのが大迫勇也と原口元気だろう。城氏はまず、大迫が外れた理由とともに、今大会における日本の戦い方を予測した。

「(大迫を外したのは)攻撃的に行かないと決めたからじゃないですかね。森保監督が積極的に点を取りに行く姿勢であれば、大迫は呼ばれたんでしょうけど。

 前田大然、浅野拓磨、上田綺世を呼んだってことは、前線でボールを受けさせるというより、みんなでしっかり守備をする戦術に決めたように見えます。前線からプレッシングをかけてショートカウンターを狙っていきたいんだと思いますね。

 僕は攻撃的に行くためのCFとして大迫をずっと推してたんですけど、森保監督は守備から入るためのCFを選択したんじゃないですかね。だから(選外は)衝撃的だったというよりも、そもそも僕と考え方が違ったんだなと。守備をここまで優先するんだな、というのが驚きでした。

 その中でも前田や浅野はとにかく前からプレスをかける役割。上田は、ボールを保持して主導権を握れる試合――たとえばコスタリカ戦とかで使われたりするんじゃないですかね」

 また、原口が呼ばれなかった理由については以下のように分析した。

「中盤やサイドでいろんなことができるんですけど、どちらかというと1人で解決するタイプというか。周りと連携をとるというよりも、1人でさまざまなことができるタイプ。森保監督は連携の部分をすごく重要視する監督ですから。

 それに日本は、みんなで守備をしてみんなで攻撃をしないと、世界とは戦えないので。原口は特化したものを持っているけど、グループでプレーするという部分を見たときに他の選手より劣っていたのかもしれないですね」

■W杯経験者は少ないが…

 また、今回のメンバー選考で疑問視されているのが、大会経験者の少なさである。これについて森保監督は「経験者の存在は大切だが、経験のない選手たちの“ワールドカップで成功したい”という野心、戦ってくれるエネルギーに期待した」とコメントした。

 ファンからは経験者が必要だという声も挙がっているが、城氏はW杯経験の有無について「あまり関係ない気がする」と分析している。

「前線のほうにW杯経験者がいないですよね。後ろには長友や吉田たちがいるんですけど。前線の鎌田や久保、伊東、三笘たちは経験していないので。

 ただ、どっちがいいのかは分からないんですよね。経験しているからこそ良いプレーができないってこともあるだろうし。W杯を知らないから思い切ってプレーできるってこともあり得ますし。

 それに、今まではJリーグから選出される選手が多かったんですけど、今は海外でプレーする選手が大半なので。だから気負いすることもないでしょう。

 所属クラブに各国の代表選手がいて外国の選手がどのくらい強いかもよく分かっているので。W杯経験者が少ないっていうのは僕はあまり関係ない気がしますね」

 城氏のコメント通り、今回発表されたメンバーのうち海外組は過去最多の20人。チャンピオンズリーグ(CL)やヨーロッパリーグ(EL)に出場するクラブに所属している選手も複数人いる。自チームでの“日常”が、W杯に活きることを期待したい。

■柴崎と相馬のメンバー入りについて

 また、ファンからは旗手怜央が落選したことに驚きが挙がり、柴崎岳が入ったことに疑問を持つ人も少なくない。城氏は「監督が選ぶことなので本当の所は分からないですけど」と前置きしたうえで、柴崎の強みについて語ってくれた。

「僕は旗手の方がいいのかなと思ってたんですけど、信頼度の部分で柴崎の方が優先されたのかもしれないですね。

 あと柴崎は一発勝負に強いので。ここ最近のパフォーマンスはあまり良くないですけど、前回のW杯は非常に良かったですし。プレーを批判されることもありますけど、ちゃんと結果も残している選手なので。
 
 そういったところの信頼性という部分でも、監督の構想に入ったのかもしれないですよね」

 また、サプライズ選出となった相馬勇紀については招集を予想していたとコメント。同選手の長所についても分析してもらった。

「僕は相馬は入ると予想していました。各ポジションに2枚くらい置きたい中で、彼は縦への突破が得意だし、自分で突破できる力を持っています。

 それに周りの選手との連携も考えられる選手なので、使い勝手がいいんですよね。万が一、左サイドの久保と三笘がうまく機能しなかったときに相馬を使うかもしれない。

 先発では難しいかもしれないですけど、頭が良いので、何かあったときには十分使える選手なんじゃないかなと思いますね」

 前回のロシア大会では日本をベスト16に導く活躍を見せた柴崎。一方、9月のキリンチャレンジカップ2022で高パフォーマンスを見せてカタール行きをつかみ取った相馬。前者には“経験”を、後者には森保監督が言うところの“野心”を発揮することを期待したい。