カタール・ワールドカップに臨む26人の日本代表メンバーが発表された。会見に臨み一人ひとりの名を読み上げた森保一監督の表情からうかがえるように、選出は非常に難しい作業だったに違いない。この26人の決定は、日本代表の行く末をどのように定めていくのか――。ベテランジャーナリストの大住良之と後藤健生が、徹底的に語り合った。
■なぜ原口が外れたのか
――外れた大迫勇也への未練が断ち切れないところでしょうか。
大住「いやいや、それよりも原口元気だよ」
後藤「何で原口を外して柴崎岳なのか、という話でしょ」
大住「原口はボールを持って試合をつくるタイプじゃないけど、守備でも本当に頑張るし、やらなければいけないことを一生懸命にやる。さらに攻撃にも絡んでいくし、本当にチームにとって今何が必要かということを分かってやってくれる選手だと思う。そういう選手になったよね」
後藤「会見でも森保一監督自身が、“戦う”といった言葉を使っていたけど、そういう意味では原口の方が柴崎より上だと思うんだけどね。大迫の場合はしばらく日本代表から離れていたことも理由になるだろうけど、原口が外れて柴崎が入ったのは最大のサプライズだったな」
大住「森保監督が柴崎に期待するものは、大きいんだろうね」
後藤「そうだろうね。監督が期待するものをゲームでしっかり出してほしいね」
大住「クラブ・ワールドカップでレアル・マドリードを相手に点を取って以来、あまり良いところを見ていないけど」
後藤「少なくとも日本代表ではそうだね」
■柴崎に求められる役割
――柴崎に期待されるのは、どんな仕事でしょうか。
後藤「最後の最後、どうしても1点が欲しい時に一発のパスを期待して出すしかない」
大住「一発のパスでタッチダウンを奪える、アメリカンフットボールのクオーターバックみたいな選手だからね」
後藤「受け手が本当に受けやすい回転をかけた、素晴らしいパスを出す選手だよ。一発で1点取って、おいしいところを持っていってほしいよ。高校時代から、そういう選手だったから。でも、守備ができないことを考えると、先発はあり得ない。だから、柴崎を出さないで済めば、それが一番良いと言えるかもしれない」
大住「一番良かった頃は、自分でペナルティエリアの近くまで入っていって、シュートを打てた。長友佑都のようにチームを明るくするようなキャラクターには見えないし、だからこそプレーで貢献しないといけない。ただ、柴崎はクラブで試合には出ているんだよね。ここに来て久保建英や田中碧など、何人かケガをしている。そういう選手がたくさん入っているのが非常に心配だよ」
――重傷と思われた板倉滉も入りました。
大住「僕は間に合わないと思っていた。ケガをしてワールドカップまで2か月くらい試合に出てないという状況で、コンディションがどうなっているのか分からない。トレーニングだけじゃなくて、何試合か出ていないと本番には使えないなという感じを受ける。あと3週間で、トップフォームにできるのか。ワールドカップというのは、ただ調子が戻っただけじゃなくて、バリバリのトップフォームじゃないと絶対にプレーできない」
■ケガ人の見極めは大丈夫か
後藤「今までのワールドカップと違うのは、集まってからコンディション調整ができないということだからね。でも、日本サッカー協会のメディカルスタッフやクラブが大丈夫だと判断したなら、外部から何か言うべきじゃない。そうかできるのか、良かった、と言うしかない。もしも板倉をCBで起用できたら、最終ラインは右から酒井宏樹、吉田麻也、板倉、そして最近は左サイドバックでも使われている冨安健洋、と並べられる。すごいディフェンス陣ができるよ」
大住「ケガをする前の、万全な状態の板倉ならね」
後藤「それはもう、僕らには分からない」
大住「そう、分からないよ。だけど非常に疑問だよね」
後藤「メディカルスタッフの判断を、森保監督がどう受け止めるかだけだから。外からは何も言えないよ」
大住「ヨーロッパに駐在してチェックしている日本サッカー協会の担当者と連絡を取り合って、今はメディカルスタッフもヨーロッパに行ってチェックしているという話をしていたんだけど…」
後藤「ダメだったら、判断ミスだったと後から批判されるだろうね。会見で話が出なかったけど、バックアップはどうなっているのかな。森保監督自身、ワールドカップまでに何が起こるか分からないと言っていたけど、何か起きた場合にどう対処するという話が全然出なかった」
大住「そうだよね、この26人でいける、という感じが全然しないんだよね」
後藤「準備や帯同するかどうかなど、バックアップがどうなるのか分からない。今なんて、新型コロナにかかるかもしれないんだし」
大住「そういう状況も考えて、登録メンバーが26人になったんだろうけどね」
後藤「バックアップの準備は重要だと思うよ」