11月20日に開幕するFIFAワールドカップカタール2022。ポルトガル、ウルグアイ、韓国、ガーナが同居するグループHを展望する。
本命◎:ポルトガル
対抗◯:ウルグアイ
3番手▲:韓国
蓮下△:ガーナ
実力が均衡するグループH。どのチームも決勝T進出の可能性秘める
全体の中では比較的、戦力差の小さいグループだ。ポルトガル、ウルグアイ、韓国、ガーナの順に付けたが、流れ次第でポルトガルとウルグアイが揃って敗退、韓国とガーナが突破してもおかしくはない。
ポルトガルはこれまでも列強との対戦ではほぼ互角の戦いをしており、その積み重ねが2016欧州選手権の優勝にもつながった。しかし、その大会ですら伏兵ハンガリーなどに苦しみ、ギリギリで決勝トーナメントに勝ち上がったのだ。前回W杯もイランに苦戦して結局1-1の引き分けだった。強い相手に強く、力が下と見られる相手に苦戦する傾向があるのだ。
どちらにしてもポルトガルの命運を握るのは、エースのクリスティアーノ・ロナウド(マンチェスター・ユナイテッド)だろう。全盛期のスピードは失われているが、巧妙なポジショニングやボックス内の決定力は健在。2014年からポルトガルを率いるフェルナンド・サントス監督は4-2-3-1の1トップに配置しており、フィニッシュに専念できる体制を整えている。
そのC・ロナウドを二列目から支えるディオゴ・ジョッタ(リヴァプール)、ブルーノ・フェルナンデス(マンチェスター・ユナイテッド)、ベルナルド・シウヴァ(マンチェスター・シティ)はチャンスメイクにかけては世界屈指のスカッドだ。さらにB・フェルナンデスは鋭い飛び出しからのフィニッシュもあり、C・ロナウドが厳しいマークにあったとしても、彼の決定力がある。
リスボンでのナイジェリアとの壮行試合をステップに、ガーナとのW杯初戦に臨む。下馬評では4番手にしたガーナもひとつきっかけを掴めばグループステージ突破、さらなる躍進を果たすポテンシャルはある。MFトーマス・パルティ(アーセナル)を大黒柱とした中盤は強度抜群だが、ややフィニッシュの決め手に欠けるところがあった。そこに、ラストピースとも言うべき、スペイン代表経験者である長身FWイニャキ・ウィリアムズが祖国のために戦うこと宣言。9月の試合に初登場した。
ポルトガルは攻撃陣が注目されるが、ディフェンスもルベン・ディアス(マンチェスター・シティ)を中心に強固な壁を構築している。ガーナは中盤の高いボール奪取力を頼りに、ショートカウンターからイニャキや現在カタールでプレーするアンドレ・アイェウ(アル・サッド)、新鋭モハメド・クドゥス(アヤックス)などがゴールを狙う。またポルトガルはロナウド、ガーナはパルティやジョーダン・アイェウ(クリスタルパレス)など、互いが直接FKで得点を奪えるだけに、危険な位置でのファウルも勝負を分けるかもしれない。
韓国はソン・フンミン、ウルグアイはスアレス&カバーニなど役者に注目
韓国はいきなり南米の強豪ウルグアイと対戦する。前回は2連敗から最後にドイツを破って話題を集めたが、グループステージで敗退した。決勝トーナメントは今大会のノルマに近い目標だろう。パウロ・ベント監督は後ろから丁寧にボールを動かすポゼッションを植え付けたが、やはりフィニッシュで違いを生み出せるのはエースのソン・フンミン(トッテナム)をはじめとした高速アタッカーたちだ。ウルグアイは15年にも渡ったタバレス体制が終わりを告げたが、ベテランのルイス・スアレス(ナシオナル)やエディンソン・カバーニ(バレンシア)は引き続き、前線からチームを引っ張る。
さらに百戦錬磨のDFディエゴ・ゴディン(べレス・サルスフィエルド)も復帰したが、次代を支えるヤングタレントもいる。特に中盤のフェデリコ・バルベルデ(レアル・マドリード)は大注目で、ウルグアイが大躍進を果たすなら、2014年のブラジルW杯でドイツの優勝を支えた先輩トニ・クロースのように、立役者となる可能性が高い。さらにロベルト・ベンタンクール(トッテナム)、マティアス・ベシーノ(ラツィオ)と言った猛者揃いの中盤に韓国がどう対抗していくのか。
混戦予想で3戦目までもつれる可能性が大
第2戦はポルトガルがウルグアイと対戦するが、前回W杯のラウンド16で激突し、ウルグアイが2-1で勝利した。ポルトガルが多くの時間帯でボールを握り、シュートも20本以上打ったが、ウルグアイはファーストチャンスでカバーニが先制点を決めて、さらに後半追加点をあげる流れだった。南米でブラジルやアルゼンチンに対抗してきたウルグアイにはそうしたしかさがあるだけに、ポゼッションチャンス数がそのまま結果になりにくい。この試合を制した方が首位突破に大きく前進するのは確かだろう。ただ、両雄譲らずドローという結果も大いにあり得るカードだ。
韓国とガーナは2014年のW杯直前に親善試合でガーナが4-0の大勝をしたが、噛み合わせとして、かなりの異文化対決になる。全体的な運動量では韓国が上回っても、局面のデュエルや一瞬のスピードでガーナが上回るシーンも出てきそうだ。ソン・フンミンもダニエル・アマーティ(レスター)など構えるディフェンスに対して、単騎の仕掛けで突破することは簡単ではないが、MFファン・ヒチャン(ウフォルバーハンプトン)やFWファン・ウィジョ(オリンピアコス)との素早いコンビネーションで切り崩せるか。
混戦が予想されるグループだけに、3試合目でどう言う勝ち点計算になっているかは読みにくい。2試合目の結果によってはポルトガルかウルグアイが敗退危機に陥っている場合もある。ポルトガルと韓国は2002年の日韓W杯で、当時FIFAランキング40位だった韓国が5位のポルトガルを破った因縁のカードで、元ポルトガル代表選手のパウロ・ベント監督の母国でもある。“スーパーエース対決”など、色々な注目点はあるが、グループステージ突破をかけた激しい戦いになることは間違いない。
ウルグアイとガーナも2010年W杯の準々決勝で対戦し、0-0のPK戦でウルグアイが勝ち進んだが、90分の結果としては引き分けである。ウルグアイはスアレスやカバーニ、ガーナはアンドレ・アイェウなどが当時を知るメンバーだが、試合巧者ウルグアイにとっても決して相性が良いと言えない相手だけに、タバレス体制を引き継いだディエゴ・アロンソ監督の真価が問われる試合になるかもしれない。
文・河治良幸
写真:AP/アフロ