モラタが所属するアトレティコ・マドリードは、レアル・マドリード、バルセロナに次ぐラ・リーガの3番手の存在だが、今季は開幕からやや苦戦を強いられている。2011年12月から指揮を執り、クラブに2度のリーグタイトルをもたらした名将ディエゴ・シメオネの下で構築された堅守速攻のスタイルに相変わりはないが、攻撃面で上手くいかない場面が多く見られる。UEFAチャンピオンズリーグ(CL)ではグループステージ敗退が決定し、リーグ戦では3位につけるものの2位との勝ち点差は8(第12節終了時点)。上位2チームが好調なだけに、逆転優勝はかなり難しい状況となっている。

イタリア・セリエAのユヴェントスへのローン移籍を経て今夏アトレティコに復帰したモラタは、ヘタフェとの開幕戦で先発起用されるといきなり2得点の大活躍を見せて勝利に貢献。すぐさまレギュラーの座を勝ち取った。その後はやや得点のペースが落ちたものの、ここまで12試合に出場して5得点を記録するなど、まずまずの結果を残している。

レアル・マドリード、ユヴェントス、チェルシーなど各国の強豪クラブでプレー

スペインのマドリードに生を享けたモラタは、2005年にアトレティコの下部組織に加入しキャリアをスタートさせる。プレーすることを楽しめなくなり一度はテニス選手への転向も検討したモラタだったが、最終的にはサッカーを続けることを決断し、ヘタフェの下部組織に環境を移した。すると1年後、ヘタフェでのプレーがレアル・マドリードの目に留まり、自身が「夢」だと語った同チームへの移籍を遂げる。

2010年にトップチームの一つ下のカテゴリーであるカスティージャに昇格したモラタは、同年12月にはトップデビューを果たした。しかし、ポルトガル代表FWクリスティアーノ・ロナウドやフランス代表FWカリム・ベンゼマらを擁するチームで継続して出場機会を得るのは容易ではない。2013-2014シーズンには500分強という少ないプレー時間で8得点を記録し才能の片鱗を見せつけるもレギュラー奪取は叶わなかった。

すると2014年夏、出場機会を求めてイタリアの強豪ユヴェントスに活躍の場を移した。1年目は途中出場が多い中、リーグ戦では8得点5アシストと一定の結果を残している。またCLでは5得点を挙げてチームの決勝進出の立役者に。2年目も絶対的なレギュラーとはならなかったが、リーグ戦で34試合に出場し7得点7アシストをマークした。イタリアで大ブレイクこそ果たせなかったが、自身の成長に手応えを感じていたモラタは2016年の夏にレアル・マドリードに復帰。2016-2017シーズンには、チーム内ではロナウドに次ぐキャリアハイの15得点を挙げたものの、やはりベンゼマの壁は高く定位置獲得とはならなかった。

レアル・マドリードでの挑戦を終えたモラタは、次なる舞台をイングランド・プレミアリーグのチェルシーに移す。移籍金は6600万ユーロと高額で、モラタはその期待に応えるかのようにリーグ戦の前半戦で9得点を挙げるなど大爆発。ようやくワールドクラスのセンターフォワードとして殻を破ったかに思われたが、後半戦でわずか2得点と大失速してしまい、結局は尻すぼみのシーズンとなった。

翌年は新しく監督に就任したマウリツィオ・サッリの信頼を得ることができず、冬の移籍で下部組織時代にプレーしたアトレティコに復帰する。2019-2020シーズンに二桁得点をマークするなど、アトレティコで安定してゴールを挙げていたモラタだったが、2020年夏にはローン移籍で今度はユヴェントスに逆戻り。このシーズンにリーグ10連覇を逃すことになったユベントスは、契約に付随していた買い取りオプションを行使せず、残留交渉も決裂したことでモラタはアトレティコに再度帰還した。

平均値が高い計算できるストライカー

シーズン20得点を記録するような爆発力があるわけではないが、ほぼ確実に二桁得点を計算できる優秀なストライカー。スピードやフィジカル、サッカーIQに秀でており、裏抜けやヘディング、ドリブルシュートなどさまざまな形から得点を奪えるのが最大の魅力だ。本職はセンターフォワードだがサイドで起用されることもちらほら。

裏抜けを積極的に狙うタイプだが、オフサイドにかかりやすいのは最大の課題だ。また決定力もそれほど高くはなく、GKとの1対1を外す場面も少なくない。全ての能力が高い一方で飛び抜けた武器はなく、それがブレイクしきれていない要因なのかもしれない。

4年前の悔しさを胸に絶対的なエースとしてカタールの地に立つ

2014年11月にスペイン代表デビュー。その後も継続的に招集されると、UEFA EURO 2016ではセンターフォワードの先発に抜擢される。グループステージで3得点を挙げる活躍を見せるが、チームはベスト16で敗退という結果に終わった。

FIFAワールドカップロシア2018(ロシアW杯)では登録メンバー落選という悔しさを味わったが、UEFA EURO 2020では再びスタメンに返り咲いてまたも3得点を記録。チームのベスト4進出に貢献した。

現在のスペイン代表にはセンターフォワードの有力なライバルがおらず、ルイス・エンリケ監督からの評価を絶対的なものとしている。自身初となるW杯の舞台となるFIFAワールドカップカタール2022(カタールW杯)ではエースとしてゴールを量産することができるだろうか。