フランス首位通過は濃厚だが、スロースターターぶりが玉に瑕

 優勝候補の一角でもあるフランスが、この組の本命だ。GSで姿を消すところは想像しにくい。

 FIFAランキング4位のフランスは、[3-4-1-2]のシステムで続けてきた。FWカリム・ベンゼマ、キリアン・ムバッペなど、経験と若さが融合している。MFポール・ポグバの欠場は少なからず影響があるとしても、代役も実力者ぞろいで不安はない。

 それでも、1998年大会で優勝した次の日韓W杯、2006年大会で準優勝した次の南アフリカW杯では、いずれもGSで敗退しているだけに、前回優勝のフランスとて油断すべきではないだろう。

 実力は確かだが、問題は入り方。前回大会もエンジンがかかるのが遅く、スロースターターという印象は拭えない。初戦のオーストラリア戦に向けてどう準備するかがカギだ。欧州主要リーグ中断直後の開幕ということで、フランスとオーストラリアでは準備期間に大きな差がある。その中でも良いアプローチができれば、フランスは問題なく16強入りとなるだろう。欲を言えば、首位通過が理想だ。2位通過の場合は決勝トーナメント1回戦でグループC首位と対戦する。そうなると、個の破壊力が怖いアルゼンチンとぶつかる可能性が高い。優勝を目指すためにはどの敵も倒さなければいけないというのが常套句だとしても、避けたい相手であるはずだ。

 2強と言われるグループDで、フランスとともに抜けると目されているのがFIFAランキング10位のデンマークだ。

 デンマークは欧州予選10試合でわずか3失点という堅守が最大の武器。1年前の悲劇から戻ってきたMFクリスティアン・エリクセンなど違いを生み出すタレントもいるだけに、攻守ともに高いレベルにある。

 システムは[4-2-3-1]あるいは[3-4-1-2]を採用することになりそうだ。

 デンマークにとっての大一番は第2戦のフランス戦だ。ただ、ここはある程度勝点を落とすことも想定済みだろう。それよりも、初戦のチュニジア戦と第3戦のオーストラリア戦で勝点6を得ることが重要。そのミッションをより楽にするためのフランス戦という意識ではないだろうか。

粘り強さが本領の“2弱”は簡単な相手ではない

[特集/カタールW杯GS展望 GROUP D]しぶとく戦える曲者揃い 前回王者フランスも油断は禁物
GKライアンの好セーブに助けられながら、オーストラリアは機会をうかがうことになる photo/Getty Images

 チュニジアは2強2弱の構図を崩す可能性があるチームと言える。

 マリとの3次予選を制して本大会行きを決めた粘り強さがある。基本となるシステムは[4-3-3]。アフリカ勢の中でも特に守備組織に優れたチームと評価されている。実際、W杯出場権を懸けたマリ戦では180分間失点せずに2試合合計1-0で勝ちきった。

 主力の一人であるエリス・スキリは、ケルンでレギュラーの守備的MF。最近頬骨を骨折して離脱したものの大会には出てきそうだ。そのほかでは19歳のMFハンニバル・メイブリも注目株。名門マンチェスター・ユナイテッドの下部組織育ちで、今季はレンタル先のバーミンガムでコンスタントに起用されている。

 日程もダークホース向きだ。初戦のデンマーク戦で波乱を起こして勝点1を獲得。第2戦でオーストラリアに勝ち、第3戦ですでに消化試合になっているフランスからも勝点を取るというプラン通りにいけば、2強に割って入る可能性もある。

 オーストラリアも虎視眈々と波乱のチャンスをうかがっている。

 FIFAランキングはこの組で最も下の38位。厳しい挑戦が待っていることは明白だ。ただ、プレイオフを戦い抜いた勢いは好材料。アジア最終予選で日本と同組だったオーストラリアは、アジアプレイオフでUAEに勝ち、大陸間プレイオフではPK戦の末にペルーに勝った。ペルーはFIFAランキング23位。オーストラリアは格上と言える相手に勝った実績があるということだ。

 システムはプレイオフを勝ち抜いた[4-5-1]で、やはり守備に重きを置いた戦い方になる見通し。守護神で主将も務めるGKマット・ライアンの好守に期待しつつ我慢の時間が長くなる中で、少ないチャンスを活かせるかが重要だ。

 オーストラリアは前回大会も大陸間プレイオフを制しての本大会出場。しかも初戦の相手はフランスだった。4年前は1-2で敗れているが、接戦に持ち込んでいる。この初戦で勝点1でも得られれば、グループ全体が大きく揺れそうだ。

文/伊藤 敬佑

電子マガジンtheWORLD(ザ・ワールド)275号、11月15日配信の記事より転載