大本命のアルゼンチン 攻守も日程も問題はなし

グループCは、FIFAランキングが示す通りの力関係だ。その上で、日程が与える精神的な差が各チームに違いを与えるかもしれない。

グループCの大本命は、もちろんアルゼンチンだ。昨年のコパ・アメリカで優勝し、W杯南米予選は首位ブラジルに次ぐ2位で突破。無敗で楽々と本大会出場を決めた。

システムは[4-3-3]か[4-4-2]。リオネル・メッシを筆頭に攻撃陣が充実しており、大抵の相手は押し切れる。メッシの相棒候補筆頭のラウタロ・マルティネスも所属クラブのインテルで好調、良いイメージで臨めそうだ。

守備力には一抹の不安はあるが、そこでもメッシの影響は生きるはず。大エースの負担を増やしてなるものかという後輩たちの意気込みは確かなものがあり、強度は申し分ない。

日程面も不安はない。初戦の相手はグループ最弱と目されるサウジアラビア。短期決戦において初戦の重要性は火を見るよりも明らかで、順当に勝てば弾みがつく。第2戦のメキシコ戦が難所となるが、ここをどのような精神状態で迎えるかという意味でも、サウジアラビアに勝っておくことが重要だ。

2位争いは実力者揃う メキシコとポーランド

[特集/カタールW杯GS展望 GROUP C]アルゼンチンの首位通過は確実? 順当か大波乱か、命運を分けるのは初戦
ポーランドの大エースとなるレヴァンドフスキ。3試合に先発するも無得点でGS敗退に終わった前回大会の悔しさを晴らせるか photo/Getty Images

グループCでアルゼンチンの対抗といえるのが、メキシコになる。W杯北中米カリブ海予選を2位で突破したチームだ。

ヘラルド・マルティーノ監督が敷くシステムは[4-3-3]。GKギジェルモ・オチョア(37歳)、MFアンドレス・グアルダード(36歳)といったベテランがチームをけん引し、組織的なサッカーを展開する。

不安があるとすれば前線だろう。北中米カリブ海予選では14試合を戦って17得点と、振るわなかった。今季の欧州主要リーグで暴れている選手も見当たらないことは心配のタネだ。

ただ、7大会連続ベスト16進出と安定感は抜群。目標はこの壁を越えることだろう。

最大のカギは、やはり初戦。2位通過の座を争うであろうポーランドとの対戦だ。

メキシコは初戦に勝てば、第3戦がサウジアラビアということで、第2戦のアルゼンチン戦は比較的リラックスできるはず。反対に初戦で敗れるようなことがあると、ポーランドに大きなアドバンテージを許す形になるため、アルゼンチン戦で勝利を狙う必要が出てくる。この精神的な圧力はかなりの負担になることが考えられるため、悪くても引き分けで入らなければいけない。

そのポーランドは、メキシコを上回るだけの力を持っているはずだ。

FWロベルト・レヴァンドフスキは34歳だが、年を重ねるにつれてさらに決定力に磨きが掛かっている印象で、大会屈指のストライカーだ。GKヴォイチェフ・シュチェスニー、FWアルカディウシュ・ミリク、MFピオトル・ジエリンスキ、ニコラ・ザレフスキなど、イタリアで活躍する質の高い選手が各ポジションにおり、GSを突破しても不思議のない戦力を有している。

W杯予選からシステムは様々な形を使っているが、一貫しているのは最終目的地にレヴァンドフスキが存在すること。そのために両サイドをシンプルに攻略してゴール前勝負という形をつくろうとしている。エースに対する絶対的な信頼があるからこそのスタイルと言えそうだ。

日程的には、2位争いのライバルと目されるメキシコよりも有利と予想する。この組でアルゼンチンが頭一つ抜けていると仮定すると、南米の強豪は第2戦までに勝ち点6を獲得している可能性がある。となれば、優勝を目標に戦うアルゼンチンとしては、第3戦でメンバーを落として決勝トーナメントに備えるというのが理想的な流れ。その恩恵があるとすればそのタイミングを狙えるポーランドだ。もちろん、第3戦を迎える時点で競っていることが大前提であるが、これは一つのアドバンテージだろう。

不気味な雰囲気漂う アジアのダークホース

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W杯アジア予選で活躍したアル・アムリは、昨年の東京オリンピックに出場した若きCB。世界的なストライカーたちを封じることができるか

ここまでの予想の全てを覆す可能性があるのがサウジアラビアだ。

サウジアラビアはアジア最終予選で日本と同じグループBを首位で通過。実力は確かだ。さらに、近隣国開催という地の利も無視できない。

アジアで見せたポゼッションサッカーをおそらく封印しなければいけないのはマイナス要素だが、それも見方によっては相手にとって未知数なポイントになる。

どのチームもサウジアラビアからは勝ち点3が獲れると想定している。そんな中、初戦のアルゼンチン戦でサウジアラビアが波乱を起こせば、グループ全体に激震が走りそうだ。特にアジア予選での安定した守備が高く評価されたDFアブドレラ・アル・アムリがメッシやレヴァンドフスキを封じるようなことがあれば、チャンスが出てくるかもしれない。

文/伊藤 敬佑

電子マガジンtheWORLD(ザ・ワールド)275号、11月15日配信の記事より転載