アルゼンチンは1986年メキシコW杯以来の優勝なるか

 カタール・ワールドカップ(W杯)は現地時間12月10日に準々決勝が終了し、ベスト4が出揃った。全64試合のうち60試合が消化され、本当のクライマックスに臨む4チームが決まった。前回王者のフランス代表に、FWリオネル・メッシのラストW杯となるアルゼンチン代表、延長戦とペナルティーキック(PK)戦で最強レベルの結果を出してきたクロアチア代表に、アフリカ勢として史上初の4強入りとなったモロッコ代表と、話題性も個性も十分な顔触れがそろっている。

■アルゼンチン
グループC 1位通過
対サウジアラビア 1-2
対メキシコ 2-0
対ポーランド 2-0

決勝トーナメント1回戦
対オーストラリア 2-1

準々決勝
対オランダ 2-2 (PK4-3)

9得点、5失点

 アルゼンチン代表はでサウジアラビア代表に逆転負けして悪い意味で世界を驚かせたが、立て直してグループCを首位通過。決勝トーナメント1回戦も順当に突破するとベスト8ではオランダ代表と対戦した。44歳と今大会で最年少のリオネル・スカローニ監督はオランダに合わせた5バックをチョイスしてシステムを噛み合わせると、メッシのアシストから右ワイドのDFナウエル・モリーナが先制点を奪い、左ワイドのMFマルコス・アクーニャが得たPKをメッシが決め、完全に策がハマる形で2点をリードした。

 しかし、ここからオランダに1点を返されると試合は荒れ模様に。ほぼラストプレーで同点に追いつかれると試合はPK戦にもつれ込んだが、GKエミリアーノ・マルティネスが2本止めて両チーム合計でベンチも合わせ18枚のイエローカードが提示される乱戦を制した。決勝トーナメントに入り2試合連続ゴールのメッシはチームの大黒柱。5大会連続出場となった今大会がキャリア最後のW杯とされるだけに、アルゼンチンのレジェンドである故ディエゴ・マラドーナ氏を中心に世界の頂点に立った1986年メキシコW杯以来の優勝が悲願だ。

■フランス
グループD 1位通過
対オーストラリア 4-1
対デンマーク 2-1
対チュニジア 0-1

決勝トーナメント1回戦
対ポーランド 3-1

準々決勝
対イングランド 2-1

11得点、5失点

 前回ロシアW杯の王者フランス代表はグループリーグを2連勝でほぼ突破を決定づけた。チュニジアには不覚を取ったが、決勝トーナメント1回戦ではポーランドに順当勝ちしてベスト8でイングランド代表との強豪対決を迎える。すると、22歳のMFオーレリアン・チュアメニがほぼノーステップでの強烈ミドルで先制点。PKで追いつかれるも、FWオリビエ・ジルーが決勝ゴールを奪った。チュニジア戦でターンオーバー起用をしただけなく、このベスト4入りしたチームで唯一、すべての試合を90分で終えている点からもコンディション的な優位性を持ちそうだ。

 大会の得点ランキングのトップに立つFWキリアン・ムバッペが5得点で、2位に並ぶジルーが4得点と、ゴールを生み出す存在がハッキリしているチームとも言える。右サイドのFWウスマン・デンベレを合わせた3トップを背後で操るMFアントワーヌ・グリーズマンの存在感も大きく、少々のことは局面を打開する個の能力で打開してしまう力強さが魅力。全試合で失点しているところが不安要素とも言えるが、複数得点を奪われていないのも事実。1点に抑えて強力攻撃陣がゴールを量産する勝ちパターンの持ち主で、連覇の可能性は十分にありそうだ。

クロアチアは消耗が激しい点をどう克服するか

■クロアチア
グループF 2位通過
対モロッコ 0-0
対カナダ 4-1
対ベルギー 0-0

決勝トーナメント1回戦
対日本 1-1(PK3-1)

準々決勝
対ブラジル 1-1(PK4-2)

6得点、3失点

 前回ロシアW杯で準優勝のクロアチアは、勝ち上がりの足跡を見ても粘り強さを存分に発揮している。記録上は1勝4分という成績であり、日本代表と対戦した決勝トーナメント1回戦、ブラジル代表と対戦した準々決勝はともに、先制された試合を追いついてPK戦にまで持ち込んで勝利している。前回ロシアW杯でも3回の延長戦で2回のPK勝ちをしているため、PKの4戦全勝はドイツ代表(西ドイツ時代を含む)と並んで、勝率100%の国では最多タイの勝利数。GKドミニク・リバコビッチのPK戦で4本セーブも、W杯の最多タイ記録となっている。

 こうしたPK戦や延長戦の強さがクローズアップされがちだが、裏を返せばカナダ代表戦を含め5試合で一度も先制ゴールを決めていない。常に追いかける展開でパワーを使いながら生き残ってきた疲労との戦いも見逃せない要素になるかもしれない。一方で、日本と優勝候補の筆頭とも呼ばれたブラジルとの試合が同じようなPK戦になるところからも、相手なりに力を出すタイプの試合巧者とも言える。それがアルゼンチン戦でどのように出るかが見どころだ。

■モロッコ
グループF 1位通過
対クロアチア 0-0
対ベルギー 2-0
対カナダ 2-1

決勝トーナメント1回戦
対スペイン 0-0(PK3-0)

準々決勝
対ポルトガル 1-0

5得点、1失点

 5試合で失点はグループリーグのカナダ戦での1点のみと、今大会の決勝トーナメント進出チームの中では最少失点。アフリカ勢として史上初の4強入りとなった原動力がここにあると言えるだろう。ジブラルタル海峡を挟んで対岸のイベリア半島の強豪に対しても、GKヤシン・ブヌの好セーブが目立ったスペイン代表とのPK戦に、センターバックのDFソフィアン・アムラバトの鮮烈なパフォーマンスが印象深いポルトガル代表戦と、堅い守備から鋭いカウンターを繰り出すスタイルで勝ち上がってきた。

 また、北アフリカのアラブ圏の国家だけに、開催国カタールに在住している国民も多いとのことで毎試合がホームスタジアムのような大声援に包まれている。4強に残ったチームで最多得点のフランスと、声援をバックに堅牢な守備を誇るモロッコの対決がどのような結果になるか楽しみなところだ。(FOOTBALL ZONE編集部)