いよいよ開幕が迫るカタール・ワールドカップ。森保一監督が率いる日本代表は、いかなる戦いを見せるか。ベスト8以上を目ざすサムライブルー、26の肖像。今回はMF鎌田大地(アイントラハト・フランクフルト)だ。

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「ドイツはメンバー的には豪華だと思います。だけど、バイエルンも今までみたいに上手くいっていないし、所属クラブで苦しんでいる選手もいる。本当に強かった時のドイツとはまた違う。僕たちも勝てる可能性はあるのかなと感じます」

 今季フランクフルトで公式戦12ゴール・3アシストという華々しい成果を残している鎌田大地。11月23日に迎え撃つカタール・ワールドカップ(W杯)初戦の相手、ドイツに対しても全く動じていない。

 W杯4度制覇の強豪と同じ目線でサッカーを見られるのも、昨季にヨーロッパリーグ制覇、今季はチャンピオンズリーグで、ここまで3得点という実績ゆえだろう。自信に満ち溢れる日本のキーマンは実に頼もしい。

 2018年9月に森保ジャパンが発足した時点では、鎌田はA代表に招集されるような状況ではなかった。2017年夏にサガン鳥栖から赴いたアイントラハト・フランクフルトではフィジカルや強度の壁にぶつかり、再起をかけてシント=トロイデンにレンタル移籍したところだったからだ。

「シント=トロイデンでは上(格上のリーグ)に戻るために、点だけにこだわった。得点以外は何もしてなかったと思う」と本人も言うほどゴールに徹底的にこだわり、公式戦13ゴール。目覚ましい活躍と得点力を認められ、翌19-20シーズンにはフランクフルト復帰を果たしたのである。

 目に見える成長の跡を示した鎌田を森保一監督も放っておかず、2019年の3月シリーズで初招集。9月から始まった2次予選では大迫勇也(神戸)不在の1トップでも試されるほど、前線での決定力に期待が大きかった。
 
 だが、本人は「自分はそんなに点を取れる選手じゃない。ベストなのは8番か6番(ボランチ)」と語っており、よりボールを握りながら組み立てに関与する形を希望していた。

 それが叶い始めたのが、コロナ禍の2020年。比重の高かった10月のコートジボワール戦と11月のメキシコ戦で、鎌田はトップ下で先発。日本の新たな司令塔と位置づけられるようになる。

 それまでは南野拓実(モナコ)がこの位置を主戦場としていたが、点取り屋の南野より、鎌田が入ったほうがよりボールが回り、組み立てのバリエーションが広がる。

 その前向きな効果を指揮官も認め、2021年には「中村俊輔や香川真司(STVV)の系譜を継ぐMF」と目されるようになった。
 
 ところが、鎌田は2021年9月から始まった最終予選で苦戦を強いられる。同年夏にビッグクラブへの移籍を熱望したが、それが叶わず、メンタル的に難しい状態に陥ったからだ。

 加えて代表でも低迷。鎌田がトップ下で先発したオマーン戦とサウジアラビア戦で敗戦という結果も重なり、森保監督が4-3-3へシフトしたオーストラリア戦から出番を失う形になる。

 2022年に入ってからは、まさかのメンバー外。これでカタール行きが厳しくなったかと思われた。

 4年間で最大の逆境……。これを鎌田は見事に跳ね除けた。フランクフルトでELの決勝トーナメントを勝ち上がり、バルセロナやウェストハムといった強敵を撃破して頂点に立つ偉業を達成。目に見える結果で指揮官の評価を変えさせたのだ。
 
 その流れは今季に入っても加速。目の覚めるようなゴールラッシュを披露し、鎌田を活かすべく指揮官が基本布陣を4-2-3-1に戻したほどである。

「点が入る時は入る。こうやってゴールやアシストが続けば、なんか入っちゃう。サッカー選手にはそういうシーズンもある。取れるうちにいっぱい取りたいなと思います」と“ケチャドバ状態”が続いている今、カタールで救世主になれるとしたら彼しかいない。

「自分流」を貫いてここまで辿り着いた26歳の鎌田にとって、今回のカタールW杯は世界にその能力を示す大舞台になるはずだ。

取材・文●元川悦子(フリーライター)

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