20日(日)に華々しい開幕を迎えた今回のワールドカップ。今大会は開催国のカタールがW杯デビューを飾ったが、“初出場”となるのは彼らだけではない。今大会はワールドカップの歴史において、初めて「背番号24~26」が登場するのだ。
ワールドカップで背番号が導入されたのは1950年大会。その時は、背番号は固定されておらず、スタメン出場する選手が1~11番を背負った。そして1954年大会から選手各々に背番号が振り分けられるようになった。当時は1チーム22名。選手枠が23名に増えたのは2002年の日韓大会から。そして今大会は、コロナ禍の影響もあって1チームの登録枠が23名から最大で26名に拡大された。
そのため、今回のカタール大会では「背番号24~26」がワールドカップデビューを飾るのだ。日本代表は「24相馬勇紀」「25前田大然」「26伊藤洋輝」というメンバーが名を連ねているが、他にも注目すべき背番号「24~26番」がいるので紹介しよう。
[写真]=Getty Images
■若手の有望株
登録枠が拡大したことで、今後を見据えて「24~26番」に若手を入れるチームは少なくない。その最たる例が、ルイス・ファン・ハール率いるオランダ代表だ。24番はDFケネト・テイラー(20歳)、25番はMFシャビ・シモンズ(19歳)、26番はDFジェレミー・フリンポン(21歳)。「24~26番」の平均年齢は32チームの中で最も低い20歳となっている。
中でも注目は攻撃的MFシャビ・シモンズだろう。バルセロナ下部組織出身で、パリ・サンジェルマンでプロキャリアをスタートしたシモンズは、今回がA代表初選出。今季からオランダのPSVに所属しており、リーグ戦最初の10試合で8ゴールと大活躍し、8月のエールディヴィジ月間最優秀選手にも選ばれた。父レジリオ・シモンズは、2003年に京都サンガでもプレーした元プロ選手なので覚えている人もいるだろう。今大会、どこまで出番を貰えるか定かではないが、注目したい選手の一人だ。
ドイツ代表も「24~26番」の平均年齢は20歳となっている。FWカリム・アデイェミ(20歳)、DFアルメル・ベラ・コチャプ(20歳)、そしてFWユスファ・ムココ(18歳)だ。とりわけ今月20日に18歳になったばかりのムココは、全チームを含めて今大会の最年少選手だが、出番を与えられれば大ブレークの可能性がある。今月5日には、ブンデスリーガ史上最年少(17歳350日)で通算10ゴールを達成。そして16日の親善試合オマーン戦で待望のA代表デビュー。17歳361日でのドイツ代表デビューは、1954年のウーヴェ・ゼーラー(17歳345日)以降で最年少記録だ。
そのゼーラーは、ペレ、クリスティアーノ・ロナウド、ミロスラフ・クローゼと並び、ワールドカップ4大会でゴールを決めたレジェンドの一人。ムココもその足跡をたどることになるかもしれないぞ!
コスタリカも24番MFロアン・ウィルソン(20歳)、25番MFアントニー・エルナンデス(21歳)、26番MFアルバロ・サモラ(20歳)という若いメンバーが名を連ねている。さらにスイスも、24歳の控えGKフィリップ・ケーン(24番)を除けば、25番MFファビアン・リーダー(20歳)、26番MFアルドン・ヤシャリ(20歳)といった若手を入れている。
■飛び道具
3枠を有効利用するために「24~26番」に飛び道具を入れているチームもある。例えばイングランドがそうだろう。イングランドは3名のうち2名がサプライズ選出となっているのだ。24番に入ったのは3年間も代表から遠ざかっていたFWカラム・ウィルソン(30歳)だ。イングランドにはFWハリー・ケインという絶対的ストライカーがおり、控えFW争いが過熱したが、最終的に滑り込んだのは今季ニューカッスルでリーグ戦6ゴールを決めているウィルソンだった。
さらに25番を背負うのは、これまたサプライズとなったMFジェイムズ・マディソン(25歳)だ。同じく3年ぶりの代表入りとなったマディソンは、A代表では3年前に1試合(35分)に出場したのみ。それでもガレス・サウスゲート監督は「他とは違う何かをもたらしてくれる」として、今季レスターでプレミアリーグ13試合7ゴールと好調な攻撃的MFを抜擢した。
ブラジルも「24~26番」は飛び道具的な選手選考となった。24番はユヴェントスのDFブレーメルだが、25番には代表2キャップしかないFWペドロ(25歳)を選出。彼はメンバー入りが決まった際に恋人にプロポーズしたことでも話題になった。そして26番を背負うのは、好調アーセナルで3トップの一角として活躍しているFWガブリエウ・マルティネッリ(21歳)だ。層が厚いブラジル代表でレギュラーは難しいかもしれないが、キレのある縦への突破と好戦的なプレースタイルで、ポイント起用が予想される。
エクアドル代表も飛び道具を入れてきた。前線にエネル・バレンシアという絶対的ストライカーを擁する同チームは、前線の控えとして24番のFWジョルカエフ・レアスコ(23歳)と26番のFWケビン・ロドリゲス(22歳)を入れてきた。そして、このケビン・ロドリゲスが20日のカタールとの開幕戦でピッチに立ち、ワールドカップ史上初の「背番号26」となった。ケビン・ロドリゲスは、今大会のメンバーの中で、唯一エクアドルの2部リーグでプレーする選手。2部のインバブラというクラブで2022年シーズンに11ゴールをマークした。今月13日の親善試合イラク戦でA代表デビューを飾り、190㎝の身長を活かしたパワフルなプレーでアピールに成功してサプライズ選出となった。
■最強の24~26番
今大会の「24~26番」だけで3対3のミニゲームの大会を開いたら、恐らく優勝するのはスペイン代表だろう。24番にはマンチェスター・Cに所属する世界有数のセンターバック、アイメリク・ラポルテ(28歳)が入った。さらに25番はバルセロナのFWアンス・ファティ(20歳)、そして26番にもバルセロナの次世代エースであるMFペドリ(19歳)が名を連ねているのだ。ペドリは18歳で出場した昨年のEURO 2020ではチームのベスト4に貢献し、大会の最優秀若手選手に選ばれた有望株だ。
■愛着の番号
中には、あえて「24~26番」を選んでいる選手もいる。メキシコのFWロベルト・アルバラード(24歳)などは、あえて背番号25を付けている。今大会の「24~26番」の中では最多キャップとなる32試合(4ゴール)の実績を誇るアルバラードは、若い頃から所属クラブで背番号「25」を背負っており、現在も「25番」を付けてグアダラハラで主力として活躍している。そのため今大会も愛着のある番号を着用することになった。
フランスのMFエドゥアルド・カマヴィンガ(20歳)も「25番」には愛着がある。フランスのレンヌ時代に背番号10を背負っていたカマヴィンガだが、2021年夏にレアル・マドリードに引き抜かれると、背番号の選択肢が限られたこともあって「25番」を選択。すると、加入1年目から公式戦46試合に出場し、チャンピオンズリーグ決勝では途中出場に留まったものの欧州制覇に貢献した。今シーズンから「12番」を背負っているが、今大会は「25番」をつける。
チュニジアのセントラルミッドフィルダー、アニス・ベン・スリマン(21歳)も背番号25を背負う。デンマーク生まれながらチュニジアにもルーツを持つスリマンは、デンマークU-19代表でプレーしていたが、ファンサイトに掲載されたプレー映像を見たチュニジアサッカー協会のスタッフに声をかけられたという。そしてU-20世代からはチュニジアを選択。既にA代表で24試合4ゴールの成績を残しており、昨年のアフリカネイションズカップでも主力としてプレーした。彼は2020年から所属するデンマークのブレンビーで「25番」を背負っており、今大会も同番号を付けてピッチに立つ。
(記事/Footmedia)