サッカー日本代表は21日、カタールワールドカップのグループステージ初戦・ドイツ代表戦に向けて練習を行なった。

 現チームには今大会が初めてのワールドカップになる選手が数多くいる。MF南野拓実もその1人だ。2018年のロシア大会後、森保一監督の就任とともに日本代表に定着した10番は、静かに夢の舞台の開幕を迎えようとしている。

「今のところは、個人的には落ち着いています。もちろん相手に関するミーティングや、試合の準備を重ねるたびに、いよいよだなという気持ちにはなりますけど、今は割と普通です」

 南野は2015年10月に日本代表デビューを飾ったが、その後はなかなか定着できず、ロシアワールドカップ出場を逃した。それでも「前回(メンバーに)入れなかったから…というモチベーションは、今はあまり考えていない」という。

「(グループステージの対戦国が)いい相手で、初めてのワールドカップ。自分の中ではそれだけで十分、すごく高いモチベーションでいられる」

 森保監督に背番号10を託された。チームのエースナンバーだ。ただ、最近はMF鎌田大地やMF久保建英ら後輩たちが台頭し、南野自身は所属するモナコで定位置を確保できず、日本代表でも出番を減らしている。

 23日のドイツ代表戦もベンチスタートになるかもしれない。大会を通してスタメンに入る機会は少ないかもしれない。そんな厳しい状況でも、南野は焦ることなく、冷静さを保っている。

「競争というのは常にある。それが日本代表なので。もちろん誰が出るか…というのはありますけど、今はワールドカップなので、そういう気持ちはあっても、誰も表には出せない。そういうことも大事な場所。チームのために何ができるのか。その中で、自分たちがお互いに刺激しあって、お互い高めあえればいいんじゃないかなと思います」

 立場がどうであろうと、あくまでチームのために行動する。ただ、南野の「誰も表には出せない。そういうことも大事な場所」という言葉には、どこか含みがある。

 では、選手としての“エゴ”をどこで出すか。強い自己主張、ある意味での自分勝手さは、回り回って「チームのため」に結びつくこともある。

「例えば、ゴール前のFWの選手だったら、強引にシュートに持っていかないといけない場面がある。劣勢で、こちらが前半に1本もシュートを打てなくて、何か雰囲気を変えたい時には、そういうプレーは必要になってくるんじゃないかなと。そういう部分でも、チームの違いを作るために、自分が何かできればいいかなと思います」

 現在の森保ジャパンは「この4年間で今が一番いい」と、南野は手応えを感じている。

「目の前の試合でスタメンではなくて悔しいという気持ちよりも、何分か試合に出るかもしれないという場面で準備をして、その時に自分に何ができるのかしか考えていないですね、今は」

 森保監督のもとで最も多くの試合に出場してきた背番号10は、フォア・ザ・チーム精神の中に、何か爪痕を残してやるんだという反骨心を秘めている。その莫大なエネルギーをドイツ代表戦のピッチで爆発させられるだろうか。今こそ、南野の力が必要だ。

(取材・文:舩木渉)

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