「サムライブルー!ゴー!」
11月20日のカタールW杯開幕戦を取材後、メディアバス乗り場で急にそんな大声が聞こえてきた。目の前には褐色の男性がニコニコして立っていた。
声の主は『ラティーナ・テレビジョン・ペルー』のファン・パラシオス記者。放映権を持つ同局のW杯取材を担当しているという。「サムライブルー(日本代表の愛称)を知ってるなんてすごいね」と言うと、「日本は大好きさ。取材で行ったことがあるし、友達もたくさんいるんだ」という。そして、こう続けた。
「カズヨシ・ミウラ、ヒデトシ・ナカタ、シンジ・オノ、シンジ・カガワ、ヤスヒト・エンドウ、シュンスケ・ナカムラは最高だ。ナオヒロ・タカハラはボカにいたし、マサカツ・サワ(澤昌克)はペルーで大活躍した。みんな素晴らしい選手だった」
「すごい詳しいね。今の日本代表は知ってる?」と聞くと、「もちろん知ってるさ。今のサムライブルーも強いチームだ」との返事。だから、「でも、今大会はドイツ、コスタリカ、スペインと一緒の厳しいグループなんだ。勝ち抜けるかな?」と突っ込むと、こう返ってきた。
「もちろんタフなグループだ。でも、自信を持つべきだ。戦う前は全てのチームに平等に勝ち抜けるチャンスがある。日本は大きなポテンシャルを持っている。キーマン? ダイチ・カマダは凄い選手じゃないか。とてもしなやかだ」
とくに「戦う前は全てのチームに平等に勝ち抜けるチャンスがある」という言葉には勇気づけられた。そして最後に「歴代の日本人プレーヤーで誰が好きだった?」と聞くと、2人の名前が挙がった。
「ナカタだ。本当に素晴らしい選手だった。大好きさ。ミウラも好きだ。彼はまだプレーしてるんだろ? いくつになった? 55歳? なんてことだ。俺は50歳だけど、もうダッシュなんてできないよ(笑)」
別れ際、「ペルーは残念だったね(大陸間プレーオフでオーストラリアにPK戦で敗北)」と言うと、パラシオスは「ありがとう。だから、今大会はサムライブルーを応援するさ。ドイツ戦も取材に行くよ」と最高の笑顔を見せてくれたので、再会を約束した。
ドイツ戦の会場で、“日本通すぎる”のパラシオスにまた会えるのが楽しみだ。
取材・文●白鳥大知(サッカーダイジェスト特派)