ドイツに対する日本の勝利は、世界中に驚きをもたらした。それはサッカー界のレジェンドたちにとっても同じだ。私はかつてワールドカップのピッチで活躍した選手たちに連絡をとり、率直な感想を聞いてみた。
現在、現役時代に活躍したインテルで副会長を務める元アルゼンチン代表のハビエル・サネッティは、日本の勝利には、前日にアルゼンチンを破ったサウジアラビアの影響も大きかったのではないかと見ていた。
「日本はサウジアラビアがアルゼンチンを破るのを見て、多分ある種の自信を得たんじゃないかな。強豪チームでも破ることができる。その自信こそが彼らに足りなかったピースでだったのだと思う」
そう切り出したサネッティは「とてもいい試合だった。ドイツには私もよく知っている優秀な選手が大勢いて、最初はゲームを支配していた。日本はドイツを恐れ、守備に徹し、とにかくゴールからボールを遠ざけるのが精いっぱいだった」と話し、こう続けた。
「私はこのまま試合が終わるのだろうなと思っていた。ところが、後半の日本はまるで別のチームだった。彼らは積極的に動き、攻撃し、まるで息を吹き返したかのようだった。これほど蘇生するチームがあるなんて本当に興味深い」
インテル時代には長友佑都とチームメイトだった名手は、「ドイツに0-1のビハインドをしていながら、逆点できた最大の鍵はハーフタイムのロッカールーム、つまり監督にあったと思う。後半の日本は自分たちを信じ、チャンスを作り、何より強い信念を感じさせた。何が何でも勝ってやるという気迫を感じた」と日本を称えた。
「一方、後半のドイツは混乱していた。彼らも前半よりよく攻め、ゴールにも近づいたが、しかし日本人の方は彼等よりずっとうまく立ち回った。この試合を見る限り南野(拓実)、前田(大然)、それからキーパーの権田(修一)。彼らは(トーマス)ミュラーや(イルカイ)ギュンドアン、(マヌエル)ノイアーに引けを取らないレベルの選手だった」
取材・文●リカルド・セティオン
翻訳●利根川晶子
【著者プロフィール】
リカルド・セティオン(Ricardo SETYON)/ブラジル・サンパウロ出身のフリージャーナリスト。8か国語を操り、世界のサッカーの生の現場を取材して回る。FIFAの役員も長らく勤め、ジーコ、ドゥンガ、カフーなど元選手の知己も多い。現在はスポーツ運営学、心理学の教授としても大学で教鞭をとる。
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