日本代表のドイツ戦勝利は、世界中に驚きを与えた。そこで、ブラジル代表のレジェンド2人に率直な感想を聞いてみた。

 まずは1982年、86年のワールドカップでSBとしてプレーしたジュニオールだ。ジーコから日本の話はよく聞いていたようだが、今回のサムライたちの活躍には目を見張ったようだ。

「世界はこの勝利に驚いたが、私は日本の熱いプレーに驚いた。私より日本サッカー通の者にはこれは当たり前なのかもしれないが、あまり日本を知らなかった私には衝撃を受けた」

 そう語ったジュニオールは、「この試合はドイツが早々に3、4ゴールを決めて片を付けると思っていた。しかし日本はそのドイツを深刻な困難に陥れた。日本はボールを持った時にあまりにもイノセントすぎると感じがしたが、それでもよい動きをし、ドイツのディフェンダーを置いてきぼりにした」と続けた。

「もちろんラッキーでもあったが、サッカーでは運を味方につけるのも非常に重要なことだ。彼らはきっと決勝トーナメントに進むと思う」
 
 このカタール大会の公式アンバサダーでもある元ブラジル代表DFのカフーは2002年のW杯で、横浜にてキャプテンとして優勝トロフィーを掲げた経験を持ち、日本には常に良い想いを抱いている。今回の日本の活躍を手放しで喜んでいた。

「これは歴史に残る試合だったと思う。見ていて楽しかったし、なによりワクワクした。それにしても前半と後半ではまったく別の試合だった。前半の日本はとにかく守ることばかりが頭にあって、ゴールチャンスはほとんどなかった。ただドイツもハイレベルな最後のタッチを欠いていて、だからPK以外ゴールを奪うことができなかった」

 ブラジルのレジェンドは「ドイツを破ったことで、日本はもうこれで堂々と、世界のトップチームに仲間入りしたと思う。ヨーロッパと南米のチーム以外では、日本が最強だ」と興奮気味に言葉を続けた。

「それにしても日本の監督はハーフタイムに何をしたんだろう。魔法のようにチームを変えてしまった。とにかく選手たちの気持ちを一瞬で変えてしまうようなことを言ったのだろう。ブラジルではこういう時『目に血を注ぐ』と言うが、まさにそれだったのだと思う」

 最後にカフーはこう語った。

「後半の日本選手たちはやる気に満ち、激しく攻め、ドイツを打ちのめした。それにしても日本のゴールキーパーは素晴らしかったね。彼が日本の勝利の鍵でもあったと思う。とにかく日本がこのまま進み続けることを願う。多くのブラジル人にとって日本代表は第2の心のチームだからね」

取材・文●リカルド・セティオン
翻訳●利根川晶子

【著者プロフィール】
リカルド・セティオン(Ricardo SETYON)/ブラジル・サンパウロ出身のフリージャーナリスト。8か国語を操り、世界のサッカーの生の現場を取材して回る。FIFAの役員も長らく勤め、ジーコ、ドゥンガ、カフーなど元選手の知己も多い。現在はスポーツ運営学、心理学の教授としても大学で教鞭をとる。

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