10分間のアディショナルタイムはすでに過ぎていた。ガンバ大阪に所属する韓国代表DFクォン・ギョンウォンの放ったミドルシュートが相手DFに当たり、CKを得る。だがその機会が与えられることなく、イングランド人のアンソニー・テイラー主審はホイッスルが無情のタイムアップを告げた。

 現地11月28日、韓国代表はカタール・ワールドカップの第2戦をガーナと戦い、惜しくも2―3で敗れた。同国のワールドカップ史において、チョ・ギュソンが初めて「1試合・2ゴール」を決めるなど一度は2点差を追いついたが、68分にふたたび勝ち越されて窮地に。アディショナルタイムを通して猛攻を仕掛け、ガーナゴールに迫ったものの、最後のCKは蹴らせてもらえなかった。

 終了と同時に、選手たちとともに猛然と審判団に食ってかかったのがポルトガル出身のパウロ・ベント監督だった。激しい口調で詰め寄り、執拗な抗議を繰り広げた結果、一発レッドを提示されてしまう。最終戦となるポルトガル戦はベンチ入りができず、スタンドで見守る羽目となった。

 退場処分を受けたため、ベント監督は試合後の記者会見にも出席できず。代わって登場したのが監督の右腕であるヘッドコーチのセルジオ・コスタ氏だ。開口一番、怒りに声を震わせて「あれは正当な抗議だった。彼(ベント監督)は不適切な言葉などいっさい使っていない」と主張し、次のように続けた。

「終了間際にあったCKを蹴らせず、主審は我々のゴールチャンスを奪い去ったんだ。ベントは当然のごとく抗議しただけなのに、レッドカードが提示されてしまった。まったくフェアじゃない! 彼だって人間なんだ。ひとりの人間としてのリアクションであったはずだ。主審は我々の努力を無駄にしたんだ。あんな終わり方になって、選手たちの落胆ぶりは計り知れなかった」
 
 韓国は2試合を終えて0勝1分け1敗で、ポイントはわずかに1と崖っぷちに立たされている。最終戦はポルトガルに勝ったうえで、ウルグアイvsガーナ戦の結果を待つほかない。かなり厳しい状況下で、ベント監督はベンチに入れない緊急事態だ。

 代わって指揮を執るコスタコーチは「これまでと変わらず準備をするだけだ。ベントは優秀な指揮官。この負けを力に変えてチームを結束させつはずだ。我々はアグレッシブに闘う!」と意気込んだ。

 なお会見には出席できなかったベント監督だが、韓国メディアの取材には応じた。退場処分に関しては言及せず、「今日の選手たちのパフォーマンスには満足している。ただ引き分けていたとして悔やまれるゲームだった」とコメント。母国代表と対峙する最終戦に向けては「良いチームだから勝つのは難しい。最善の準備をするだけだ」と語った。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部

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