アメリカ、エクアドルとの9月の2連戦で遠藤航とともに主力ボランチを位置づけられ、FIFAワールドカップカタール2022で中盤の要として躍動するはずだった守田英正。しかしながら、ドーハ入りした15日に左ふくらはぎ違和感を訴え、いきなり全体練習合流を回避。17日のカナダ戦も帯同せずに調整を続けてきた。
23日のドイツ戦直前には「違和感はもうない。僕は出るつもりで復帰に向けてやってきました」と完全復活を強調。自身の状態が日本中に注目されていることを問われると「本当に光栄なことですし、僕も自分のことをそれだけの選手だと思っているので。期待してもらって結構なので、それをちゃんと結果で返せるようにしたいです」と自信をのぞかせていた。
だが、初戦はベンチ。遠藤と田中碧のボランチコンビの一挙手一投足を外から見守ることになった。前半はプレスがかからず、トーマス・ミュラー、ジャマル・ムシアラらの神出鬼没な動きに翻弄されたが、後半から一気にスイッチが入った。
特に遠藤は日本がアタッカーをズラリと前に並べた終盤、1人で中盤の守備を担うような状況を耐え忍び、タフに戦い抜いた。そんな仲間の勇敢な姿、日本の歴史的勝利を目の当たりにして、守田は喜びと悔しさの両方を味わったことだろう。
「刺激を受けています。出ていない選手はやはり悔しかった部分があると思うし。途中から出場した選手が結果を残したことはチームとしては素晴らしい。出られなかった選手も次自分の番が来た時にちゃんと準備していれば、ああいう形で結果を残せるというのは前例としてできたと思う。悔しいですね」
本来は自分がドイツ撃破の一員になるはずだった背番号13は次への奮起を誓った。
こうした流れの中、迎えた27日のコスタリカ戦。満を持して遠藤とボランチを組んだ守田は持ち前の技術と攻撃センスを遺憾なく発揮し、攻めの起点になるつもりでピッチに立った。だが、コスタリカが5-4-1のブロックを作って引いてきたのがやや想定外だったのか、外でボールを回せてもクサビのパスやサイドチェンジを出せず、停滞した状態を余儀なくされてしまう。
彼自身も11月13日のファマリカン戦から2週間試合が空き、試合勘の不足が見て取れた。W杯特有のムードや強度にやや適応できずに苦しんだ印象もあった。35分過ぎから3バックにシフトしたことで多少なりとも流れが改善したかと思われたが、前半は本来の彼からは程遠いパフォーマンスだったと言わざるを得ない。
森保一監督は後半頭から浅野拓磨と伊藤洋輝を投入。攻撃のギアを上げようと試みる。それに守田も呼応。開始早々に浅野とのワンツーから思い切ったシュートを放つ。そこからようやく彼らしい展開やパスワークが見られるようになる。さらに三笘薫、伊東純也といったカードが投入されると攻撃はさらに活性化。ゴールまであと一歩というところまで迫った。
けれども、コスタリカ戦は13時キックオフ。スタジアムには空調施設が入っていたものの、ピッチ上には直射日光が当たり、選手の体力を奪っていく。実戦から離れていた守田も当然のごとく消耗し、強度が低下していった。
81分の失点シーンにつながる一連の流れはそれを象徴していた。コスタリカのボランチ、セルソ・ボルヘスがボールを持ち、背後に走ったケイセル・フレールに浮き球のパスを供給したシーンでも、近くにいた守田がマークに行き切れていなかった。そして伊藤がヘッドでクリアし、吉田麻也のボール処理が短くなった時も、守田は必死に足を伸ばしたが、コントロールしきれずにイェルツィン・テヘダに拾われた。これがフレールに渡り、次の瞬間、日本は致命的な1点を奪われた。疲労困憊の中盤のダイナモはここ一番で踏ん張り切れなかったのである。
「セカンドボールの拾い合いになった時、相手より早く触ってクリアするような意図でやったけど、結局、僕が死に体のような形になって入れ替わるシーンになった。落ち着いて静態するようなこともできたんじゃないかなというのが個人的な思いです」
試合後、彼は冷静に振り返ったが、初めてのW杯の厳しさと難しさを痛感させられる結果となったのは事実。ここからいかに這い上がるかを考え、集中するべきだ。
「もう勝たないといけないことは決まりましたし、本当に数日しかないですけど、しっかり分析して勝ちにいきたいと思います」
守田は気丈に前を向いた。そうしなければ、12月1日に対峙するグループ最終戦の相手であるスペインには勝ち切れない。スペインvsドイツを見てもわかる通り、パス回しの正確さは世界一。森保監督も「うまくてテクニカルなチーム、その前に激しく厳しくその中で技術を発揮できるし、お互いが連携連動できる世界最高のチーム」と神妙な面持ちでコメントしていた。
ドイツ以上に難敵であるスペインを撃破するのは至難の業だが、16強入りしたければやるしかない。守田らMF陣はタレントぞろいの黄金の中盤を阻止する重要タスクを託されることになる。
そこでコスタリカ戦の不完全燃焼感を払拭し、日本に勝利をもたらすことができれば、彼自身も一段階高い領域に到達できる。そうなるように、心身ともに状態を整え、120%でぶつかっていけるように準備するしかない。
守田の真骨頂を発揮するのはまさに今だ。
取材・文=元川悦子