そのスピードで大きな貢献をもたらす

日本がFIFAワールドカップ・カタール大会でスペインを破り、決勝トーナメント進出を決めた。スペイン、ドイツのいるグループEを首位で突破しており、今世界中が日本に注目している。

そんな日本のW杯での戦い方が定まったのが、2-1で勝利した9月のアメリカ戦だ。ボールを持った相手には積極的にプレッシングを仕掛け、相手のミスを誘ってゴールを奪う、ハイプレス・ショートカウンターが戦術の軸となった。

そこでチーム内での評価を上げたのが、前田大然である。横浜F・マリノスからセルティックへ移籍した韋駄天で、強みは世界にも通用する加速力・スピードだ。日本代表で最も早い選手であり、彼が1番手となってハイプレスを仕掛ける。

スペインのGKウナイ・シモンは足元でボールを扱うことを得意とするGKで、前半は前田のプレスも簡単にいなしていた。だが後半日本に勢いが生まれると、シモンのパスがずれるようになり、48分堂安律の同点弾が生まれた。前田含む前線の選手のプレッシングに、三笘薫、伊東純也と両ウイングバックも呼応し、高い位置でボール奪取できたことが大きい。9月にぼんやりと見えてきた進むべき道は間違っていなかった。

その後も前田は快足を生かしてプレッシングを続け、62分浅野拓磨との交代でお役御免となった。ポストプレイなどの攻撃面ではもちろん改善すべき点は多いが、前田のスピードがなければあの同点弾は生まれなかった。

『FIFA.COM』ではスペイン対日本のデータを公開しており、前田は62回のスプリントを記録している。これは両チーム通じて最多の数字である。前田は62分までしかプレイしておらず、1分間に1度のスプリントを記録していた計算になる。攻撃面での貢献は少なかったかもしれないが、守備的CFとして役割を遂行した。

ストライカーとして投入されるも62分でシュート数ゼロだった前田。ただ守備面では大きすぎる貢献を見せており、次のクロアチア戦でも前田の快足がチームを救うことになるだろう。