【FIFA ワールドカップ カタール 2022・グループE】日本2-1スペイン(日本時間12月2日/ハリーファ国際スタジアム)
「これだから代表はやめられない」。スペイン代表を下し、決勝トーナメント進出を決めた直後の日本代表キャプテンDF吉田麻也が生んだ名言だ。国の期待を背負い、称賛の何倍もの批判を受け、それでも試合で最大のパフォーマンスを発揮するため、準備に準備を重ねる。スペイン代表戦を前に「全てを捧げる」と語った吉田は、試合終了の直後、ピッチの上で両手を天に掲げて喜ぶと、ベンチにいた控えメンバーたちが一斉に駆け寄りも、もみくちゃにされた。
勝てばグループリーグ突破、引き分けは条件次第、そして負ければ敗退決定。痺れる状況で迎えたスペイン代表戦は、相手にボールを持たれてもしっかりと引いて守り、日本代表のサッカーを作ることを心がけていた。11分に先制ゴールを許しても、吉田は大きな声で仲間も鼓舞し、かつ冷静に守ることを徹底した。前半で崩れず2点目を許さなかったことで、後半に攻撃的な選手を入れ替えた時のペースチェンジがスペイン代表には効果的だった。48分に堂安律がたたき込んだ同点ゴール、51分に田中碧が体を投げ出してまでもぎ取った逆転ゴール。これもまた前線のFW前田大然のチェイスから、吉田を含む最終ラインまで、チーム全体でコンパクトにプレスをかけてボールを奪ったからこそ生まれたものだった。
リードを奪ってからも40分以上、スペイン代表の細かいパス回しによる攻撃に耐え続けたDF陣。ついに終了のホイッスルが響いた時、出場していた選手はその場で喜びを表現していたが、キャプテン吉田のもとには多くの控え選手が全力でダッシュした。スペイン代表には東京オリンピックでもオーバーエイジ枠として参加し、延長での悔しすぎる敗戦も共に経験した。五輪代表でのリベンジをA代表、しかもワールドカップの大事な一戦で果たしたとなれば、喜びは何倍にもなった。
大きな吉田ではあるが、次々に走って来た仲間にあっという間に囲まれ、そして倒され、もみくちゃになった。おそらく“歓喜のもみくちゃ”の中では、言葉にもならない歓喜の叫びが飛び交っていたことだろう。「これだから代表はやめられない」。こんな瞬間がまた味わえると思えば、どこか痛かろうが、疲労に息が切れようが、何度でもキャプテンマークを巻いて、吉田がピッチに君臨する。
(ABEMA/FIFA ワールドカップ カタール 2022)