●史上初のベスト8を狙うサッカー日本代表
サッカー日本代表は現地時間5日、FIFAワールドカップカタール2022ラウンド16でクロアチア代表と対戦する。前回大会準優勝国との決戦は、日本代表の右サイドの攻防が勝敗を左右するかもしれない。スペイン代表戦で同点弾の起点となった伊東純也は、クロアチア代表戦に向けて野心をたぎらせている。(取材・文:元川悦子【カタール】)
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「クロアチアはロシアワールドカップ(W杯)のファイナリスト。非常に賢く戦える試合巧者。我慢強さを持ち合わせていて、試合をモノにできるタフなチームだと思います」
森保一監督が警戒心を露わにする通り、カタールW杯で史上初の8強入りを賭けて挑むクロアチア代表は難敵以外の何物でもない。
人口約400万の小国でありながら、98年フランス大会3位、2018年ロシア大会準優勝など素晴らしい成果を残している。今大会も前回MVPのルカ・モドリッチ中心に強固な一体感と結束力を持って戦っている。
指揮を執るズラトコ・ダリッチ監督も「過去数年は世界の舞台で実績を挙げているし、環境を考えてもクオリティが上がっている。W杯や他の大会にもつねに出場しているし、世界のサッカーを代表する国の1つになっている」と自信満々。今回も虎視眈々と頂点を狙っていくという。
経験豊富で老獪な敵に対し、日本代表はチャレンジャーとして向かっていかなければいけない。グループリーグで対峙したドイツ代表、スペイン代表よりはボール保持率が上がるだろうが、相手の攻撃を粘り強く守る必要性があるのは変わらない。特に決勝トーナメント以降は1点の重みがより大きくなる。そこは最終ラインを統率するキャプテン・吉田麻也を中心に再度、意思統一を図っていくしかない。
●スペイン代表戦の同点弾、起点となったのは?
華麗な中盤、今大会2得点のアンドレイ・クラマリッチの存在とともに、注意すべきなのが、相手左サイドに陣取るイバン・ペリシッチ。彼の局面打開と精度の高いクロスから決定機が生まれるケースは少なくない。そこをしっかりとケアするのが、右ウイングバックに陣取るであろう伊東純也だ。
「自分たちが引いた場合で、サイドに開いてたらスペイン戦みたいに自分が見る形になる。ウイングバック(WB)の選手が見て、中に入っていった時に3バックに右の選手に受け渡す感じだと思います
(ペリシッチは)1対1になってもあまり抜かれる気はしないですけど、引きすぎないようにプレッシャーをかけることが大事。スペイン戦で(堂安)律のゴールにつながった時みたいに、前に行ける時はどんどん出ていきたい」と本人は要注意人物をフリーにさせない守備を心がけながらも、時には大胆な攻撃姿勢を強く示す覚悟だ。
スペイン代表戦で堂安の同点弾につながったシーンを振り返ると、伊東が前に上がってアレハンドロ・バルデからボールを奪った際、背後にはダニ・オルモが残っていた。それでも彼はあえて勝負に行き、見事なアシストにつなげている。
「みんなから『スゴいよかった』と言われましたし、ボールを取れると思ったんで。SB(バルデ)が自分のことを見えていないのが分かってたんで、トラップした瞬間を狙えば取れると思ってギア上げました。仮にかわされたりしても、スプリントで戻ったり、滉が来てくれたりして、みんなで守れると思ってた。それに、(三笘)薫と(前田)大然、律が前からプレスをかけて、自分だけ行かずにフリーで持たれたらもったいないなと。そこで行こうと判断したんです」
●伊東純也にとって追い風となるのは?
本人がこう説明しているように、守備に奔走する中でもワンチャンスをモノにしようと虎視眈々と狙っているあたりは、まさに生粋のアタッカー。低い位置に押し込まれたドイツ代表・スペイン代表相手でもそういった姿勢を忘れなかったのだから、クロアチア代表を相手にしてもいざという時には思い切り出て行けるはずだ。
「フォア・ザ・チーム精神」を第一にしつつも、もっともっとゴールに絡む仕事をしたいと本人も考えている。実際、4日の取材対応でも「もうちょい攻撃したい」と偽らざる本音を吐露していた。
「ドイツとスペインとの2試合では、高い位置でボール持ったことがほとんどなかった。コスタリカ戦はちょっと別ですけど、やっぱり高い位置で受けたらやっぱり仕掛けたいな。クロスまでは絶対に行きたいなと思います」と伊東は野心を口にする。それが最終予選で4ゴール・2アシスト・PK奪取と全12ゴールの半分以上に絡んだ男の真髄なのだ。
今大会唯一のクロアチア代表の失点であるカナダ代表戦開始2分のシーンを見ても、カナダ代表の右サイドから上がったクロスから得点が決まっている。
クロアチア代表の左サイドバック(SB)を務めるボルナ・ソサが体調不良で欠場濃厚なのも、伊東にとっての追い風になりそうだ。ソサがいないとなれば、伊東付近で相手の隙が生まれる可能性が高まりそうだ。そこで本来のチャンスメークやフィニッシュへの鋭さを発揮していけば、最終予選の時のように「攻めの切り札」としての働きができる。それを多くの人々が待ち望んでいるのだ。
●「どのチームにも通用する」攻撃の形とは?
「もちろん自分で決めたいっていうのはありますけど、今はウイングバックをやったりしてて、ゴールに遠いんで、自分が直接狙うのはなかなか難しいのかなとは思ってます。だけど、チームのゴールにつながる動きだったりっていうのはしたい。そのうえで、チャンスがあればゴールも狙っていきたい」
伊東は背後を狙う動き、中への侵入などを織り交ぜながら、堅守のクロアチア代表を鋭く打破していく構えだ。
ここまで3試合に出場。右MF、右WB、2シャドーと多彩なポジションをこなし、無尽蔵のスタミナと献身的な守備でチームに貢献してきた。その貢献度は極めて高いからこそ、彼には本来のアタッカーとしての仕事を全うし、ゴールに突き進むシーンを増やしてほしい。矢のようなスピードと決定力を強く押し出されれば、クロアチア代表守備陣も嫌がるはずだ。
「ショートカウンターはどのチームにも通用すると思います、それが大事」と断言する背番号14にはその急先鋒となり、クロアチア代表を撃破するゴールを奪い、8強への高い、高い壁を乗り越えてもらいたいものである。
(取材・文:元川悦子【カタール】)
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