日本代表MF堂安律(フライブルク/ドイツ)が6日、メディア対応に応じた。

 FIFAワールドカップカタール2022・決勝トーナメント1回戦でクロアチア代表と対戦した日本代表は、前半終了間際に前田大然(セルティック/スコットランド)のゴールで先手を取る。このまま1点を守り切るべきか、それとも追加点を狙うべきか。堂安はハーフタイムを振り返り、「1-0で勝ってて、僕たち選手としては『2点目取りに行こう』って声を掛け合ってた」と明かす。しかし、55分にイヴァン・ペリシッチ(トッテナム/イングランド)に同点ゴールを許すと、そのまま時間が経過。90分間、延長戦を経て、PK戦で涙を飲むこととなった。

 クロアチア戦の戦い方については「結果論なのでそこに悔いはないです」と話した堂安だったが、一夜が明けても悔しさは変わらない。「未熟さを知った大会でもありました。オリンピックが終わって、『ああいう思いは2度としたくない』と思いながら、あれから1年ですけど、努力してきてできたこと、できなかったことはもちろんありますし、色んなことを感じさせられた大会でした」と話した後、「無力さと言ったほうがやっぱ言葉的には近いかもしれない。途中交代してベンチから見てる時は頑張って応援しましたが、やっぱり悔しかったです」とコメント。「26人全員で戦っていた瞬間は、素晴らしい時間でした。このメンバーと一緒に試合することはもう2度とないので悔しいですね」と、率直な気持ちを吐き出した。

 今大会の日本代表は、4年間の積み上げてきたものを発揮するような戦い方というよりも、現実的にワールドカップで勝つ戦い方を採用していた。それは大会期間中に選手各々の口から聞こえてきており、結果のために一種の“割り切り”も感じられた。堂安は「ドイツ、スペインの時にやった戦い方は僕たち選手がやりたいことではない。ただ勝つ可能性を上げるために取った手段なだけであって。見てる方もそうですけど、僕たちもそれが理想としているサッカーではないことはわかっています」と話す。堂安のように次の日本代表を担っていく存在が何を掲げ、積み上げていくのか。堂安は「やはり強豪国相手にワールドカップで90分間、ボールを保持して勝ちたいという理想はある」と話した後、他の選手たちからの意見も聞きながら堂安なりの考えを明かしてくれた。

「理想を求めて勝ちたい。良いメンバーも揃っているし、それができるポテンシャルもあると思う。昨日もホテルで選手内で話しましたけど、その話は出て。やっぱり南アフリカが終わってからの4年間は理想を求めて敗退したと、経験している選手が話してくれた。だからこそ、この大会でできた粘り強い守備などは、ベースとして持っていないといけない。それを持ちながら、理想を求めたい。ベースを変えるのはダメなので。技術を含めて身体能力を上げていかないといけない。戦術的な理解度も必要です。スペインとかを見ていると、能力は高くなくても、あれだけボールを保持できている。やっぱりポジショニングであったり、選手同士の意思疎通だと思うので、それは僕ら日本人にも取り入れられると思いますし、求めていかなくちゃいけないかなと思います」

 また、今大会で堂安はベテランの存在に大きな影響を受けたという。長友佑都(FC東京)や吉田麻也(シャルケ/ドイツ)ついて「普段の立ち居振る舞いや言葉に説得力がある」と話すと、「彼らのような人は今の若い選手にいないですし、背中を見て学ばせてもらった」とコメント。「彼らも先輩方の背中を見てああいう存在になったと思います。次は僕たち(東京)オリンピック世代が多いですし、そのメンバーが背負っていかなくてはいけない。エースになりたいと言っていますけど、リーダーにならなくちゃいけないかなとも思っています」と決意を新たにした。

 今大会が自身初のワールドカップ出場となった堂安は「夢の舞台とは思ってましたけど、想像以上でした」と振り返る。かつてはワールドカップよりも、ヨーロッパのクラブチームによって頂点が争われるチャンピオンズリーグ(CL)への憧れを口にしていたが、「これほど高揚感があって、3週間ずっと緊張しっぱなしで、自分が自分じゃないような感覚っていうのは感じるのは、おそらくCLでは感じないので、少しイベント感のある大会だとは思います」と語った。個人的な目標はどちらか一方に絞る必要なんてない。「CLは個人的な目標ですし、CLに出れるクラブに行って絶対活躍してやるって夢はありますけど、これほど国民、日本を背負って戦えるのはワールドカップだけ。今回、本当に想像以上に自分を奮い立たしてくれたので、日本代表に対する想いはさらに強くなっています」と、今後に向けて野心を燃やしている。

 ドイツ代表戦、スペイン代表戦で同点ゴールを決めた堂安は、今大会でチーム唯一の2得点と印象的な結果を残した。世界のトップに少しずつ近づいている感覚があるのかと思いきや、「やっぱり近く行けば行くほど、遠く感じるのが正直なところ」と明かす。「(キリアン・)エンバペ見たらわかる通りあんな選手もいますし、同年代ですし。(コーディ・)ガクポだってそう。自分がPSVにいた時にベンチだった選手があれほど飛躍する姿は想像しなかったです」と今大会で輝く“スター”たちの名前を引き合いに出しながら、「追いついていく、追いかけていくのに必死です。誰よりも努力しなくちゃいけないと思っています」と想いを口に。「2大会連続、3大会連続で取っていれば圧倒的に自信に変わるんでしょうけど」と前置きしつつ、堂安“らしい”向上心の正体を分析している。

「今振り返っても、それほど自分が『やってやったぞ!』って感覚があまりない。それは負けて終わったからっていう無力さが勝ってるだけかもしれないですけど、昨日の舞台で決めれない自分に対して未熟さを感じる。その感覚のほうが勝ってます」