ベスト8が出揃ったカタール・ワールドカップ。4強入りをかけた熱きバトルに世界中のフットボールファンが注目している。本稿では、現地時間12月9日に行なわれる準々決勝のクロアチア対ブラジルを展望する。

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 前回準優勝のクロアチアと優勝候補のブラジルというカードで準々決勝がスタートする。タレント力ではブラジルが上手であることは間違いない。しかし、ズラトコ・ダリッチ監督が率いるクロアチアは試合巧者であり、ブラジルに対しても粘り強く巧妙な試合運びで、接戦に持ち込むプランが想定できる。

 クロアチアは、PK戦に勝利したラウンド16の日本戦やグループステージ(GS)を含め、ここまで引き分けが3試合。GSのカナダ戦は4-1で勝利したが、4試合で2失点という結果が示す通り、堅実な守備がベースにある。ブラジルは7得点を挙げている一方、失点は2とこちらも守備は安定している。
 
 チッチ監督が率いる「セレソン」ことブラジルは圧倒的な攻撃力がイメージされるが、ボールポゼッションにはそれほどこだわらず、効率良くボールを運びながら、鋭く縦に仕掛ける攻撃をベースにしている。ミドルゾーンでタイトにプレッシャーをかけるが、ハイプレスは限定的であるため、クロアチアも自陣ではそれなりにボールを持てるはず。

 ただ、ディフェンスにチアゴ・シウバとマルキーニョスを擁するブラジルはロングボールに強く、クロアチアも簡単に高い位置で起点を作ることはできないだろう。司令塔のルカ・モドリッチを軸とする中盤がいかにブロック内でブラジルのディフェンスをいなしながら、左サイドのイバン・ペリシッチなどに前を向かせるか。ペリシッチとワールドクラスの対人能力を誇るブラジルの右SBエデル・ミリトンによるマッチアップは大注目だ。

 ブラジルの攻撃に目を向けると、やはりネイマールの復帰が心強い。4-1で勝利したラウンド16の韓国戦では3試合ぶりにスタメン出場して、PKながら得点を記録。4点目の起点になるなど、4-1-2-3の二列目から存在感を見せた。

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 ブラジルはラフィーニャ、リシャルリソン、ヴィニシウス・ジュニオールの3トップも脅威になるが、単発の攻撃ならクロアチアも20歳のヨシュコ・グバルディオルを筆頭に1対1の守備は強い。アンカーのマルセロ・ブロゾビッチがネイマールに危険な位置で自由にさせないこと、ワイドに流れた時の周囲の対応力も問われる。

 カゼミーロやルーカス・パケタも攻撃参加するなど、前がかりに来るブラジルからクロアチアが上手くボールを取れれば、裏返しのカウンターで大きなチャンスが生まれる。ただ、ブラジルの左サイドはヴィニシウスの危険もあり、日本戦ほど右SBのヨシップ・ユラノビッチは攻め上がれないかもしれない。
 
 全体的にはブラジルが優勢と見られるなかで、クロアチアが攻守のバランスをどう変えていくのか。90分を同点のまま終えて、得意の延長戦に持ち込もうとするかもしれない。ただ、PK戦になってくると、日本戦で3本を止めたドミニク・リバコビッチをもってしても、ブラジルの選手たちは非常にPKが上手く、GKもPKストッパーとして定評のあるアリソン・ベッカーなので、PK戦の勝利がどこまで見込めるかという実情はある。

 早い時間からリードを奪って仕留めにくるブラジル、ある程度、耐える時間を作りながら、わずかな隙を狙うクロアチアという構図になりそうだが、お互いにベンチメンバーも充実するだけに、両指揮官の選手交代も鍵を握りそうだ。

取材・文●河治良幸