それは決して日本の中継向けに、あえて大きく音量調整したわけでもなく、本当に大きかった。場所は日本から8000キロ以上離れた中東・カタール。それでも「FIFA ワールドカップ カタール 2022」を戦った日本代表の4試合では、いつでもホームと間違えるかと大きな日本サポーターの声が響いていた。
日本サッカー協会(JFA)は、サッカーを愛する全ての人を「サッカーファミリー」と呼ぶ。森保一監督も、大会期間中のインタビューの度に「サッカーファミリー、そして日本国民のみなさんのために」という言葉を繰り返した。ドイツ代表、スペイン代表という優勝経験国の2チームを破り「ドーハの歓喜」を起こした選手たちはもちろん、監督・コーチを含めたスタッフ、それを応援するサポーター、今回の大会をきっかけにサッカーに興味を持った人まで含めて、サッカーファミリーだ。
ドーハと言えば、サッカーファミリーにとってはかつてワールドカップ初出場を目前で逃した「ドーハの悲劇」の場所として記憶されてきた。そんな過去を振り切るように選手たちが懸命にボールを追い、体を張ると、スタンドにいたサポーターたちもとにかく声を振り絞った。ベテラン長友佑都も会見で「ホームみたいだった」と振り返る声援が、選手の力にならないはずもない。まさにファンではなく「サポーター」だった。
今大会も、サポーターによるゴミの片付けが世界的に注目を集めた。しかも今回は日本代表戦の前、開会式からだ。サポーターを含めた「日本」という国に対してポジティブな雰囲気が流れる中、グループE初戦で日本代表はドイツ代表を倒すジャイアントキリング。これで現地カタール、さらには世界中から集まったファンをも味方につけ、その後のコスタリカ代表戦、2度目の大金星となったスペイン代表戦、惜しくもPKで敗れたクロアチア代表戦と、どんどん声援は大きくなった。
森保監督の言葉を借りれば「共闘」したサポーターたちに、惜敗の後、監督や選手たちは頭を下げて、ベスト16の壁で跳ね返されたことを詫び、また感謝した。大泣きしていたサポーターたちも「ありがとう」と返した。そして「次こそは」という思いを共有した。今回の大活躍で、サッカーファミリーの輪は大きく広がったことだろう。チームとファンが一緒に見せてきた大和魂も、世界に強く刻まれた。4年後に新しい景色、ベスト8を達成するために、サポーターたちはまた青いユニフォームを着た選手たちをスタンドから叱咤激励し続ける。
(ABEMA/FIFA ワールドカップ カタール 2022)