メッシが準々決勝オランダ戦で躍動、アシストパスで流れ一変

 カタール・ワールドカップ(W杯)準々決勝のアルゼンチン代表対オランダ代表の一戦は、FWリオネル・メッシの凄さが凝縮された一戦だった。オランダの堅守の前に、なかなか攻め切れなかったアルゼンチンだったが、ワンプレーで流れを変えたのがメッシだった。

 ピッチ中央やや右寄りの位置でDFナウエル・モリーナからボールを受けたメッシは、オランダの守備陣に対して左足でシュートが打てる態勢で左斜めへドリブルを仕掛けていく。メッシのマークにはDFナタン・アケが付いた。メッシのドリブルの間にモリーナが、アケがいたスペースに入っていくと、十分にアケを引き付けた10番から、右斜めにいるモリーナへパスが送られる。このボールを受けたモリーナが、DFフィルジル・ファン・ダイクが寄せてくる前に右足アウトサイドでシュートを流し込み、アルゼンチンが先制した。

 代表通算25試合目にして、初ゴールを記録したモリーナは「ようやくこのユニフォームでゴールを挙げることができた。本当に嬉しい。特にこうした難しい試合で挙げられたゴールだっただけに格別だ」と、試合後のミックスゾーンで喜びを表した。ドリブルの最中、メッシはほとんど顔を上げずにボールを運んだが、しっかりと連係が取れていた。

 対戦したオランダの選手たちは、どのように感じたのか。GKアンドリエス・ノペルトは「試合前、僕は『メッシもほかの人と同じように人間だ』とコメントした。それは真実だと思う。けれど、信じられないプレーをしていたし、彼が世界最高の選手であることを今日の試合で示した」と、脱帽した。

 先制ゴールの場面でメッシのマークに付いていたアケは、「メッシが質の高さを示した局面だった。彼は僕の横をドリブルして、完璧なパスを出した。その点で素晴らしいゴールだったと思う」と語った。そして「確かにメッシは走れないと言われるけれど、90分間、今日でいえば120分間、彼を抑えるのは難しい。隙を伺い続けてポジションを取り、カウンターを狙っている。そしてカウンターになると、常にそこに関わってくる。絶対に集中を切らせない」と、コメントしている。

 その後、メッシはPKでゴールもマーク。試合終盤に2-2に追い付かれたものの、PK戦を制して準決勝に進出した。驚異的なプレーでこの試合もマン・オブ・ザ・マッチに選出されたメッシは、自身がキャリア最後になると明言しているW杯で悲願の優勝を成し遂げることができるだろうか。(FOOTBALL ZONE特派・河合 拓 / Taku Kawai)