大会拠点ホテル「ラディソン・ブル・ホテル・ドーハ」スタッフが語った日本の印象

 日本代表がカタール・ワールドカップ(W杯)のベスト16で敗れたクロアチア代表戦(12月6日)から1週間余りが過ぎたなか、あるホテルを訪ねた。エントランスを潜ると、日本人だと気付いたスタッフの1人が「オハヨウゴザイマス」と声をかけてくれた。その語感から、日本に対して好感を持ってくれていることが伝わってくる。

 このホテルの名前は「ラディソン・ブル・ホテル・ドーハ」。日本代表がカタールW杯の拠点としていたホテルだ。ここに日本代表が残したモノがないか探しに来た。最初に声をかけてくれたのは、このホテルのセキュリティー担当のスタッフだった。日本代表との思い出を聞きたいと話すと、どこか懐かしみながらこう語ってくれた。

「本当に素晴らしい体験だった。大会にも大きな影響を与えていった。でも、それ以上に良い人たちで、振る舞いがとても上品だった。親切で、みんなをリスペクトしてくれた。彼らが居なくなって、本当に寂しいよ。最後の試合もみんなで応援していて、日本が負けた時にはみんなで泣いた。このホテルの誰もが、日本を恋しく思っているよ」

 さらに「彼らと接するなかで、人をリスペクトするということが、どういうことかを考えさせられた。そして、僕たちは誰もが心を温かい気分にさせてもらったよ。僕たちに本当に大きなモノを与えてくれたから、喪失感がとても大きいんだ」と続け、日本代表が滞在した日々が、かけがえのないものだったと振り返った。

 代表チームに帯同した西芳照シェフが帰国する際、自身のツイッター上でアップしたある写真が話題になった。投稿に添えられていたのは、ホテルへの感謝の意を込めた折り鶴がテーブルに並べられた姿だった。その折り鶴は今もホテルに保管されているという。

「あれを見て、彼らがここにいたことを思い出して温かい気持ちになるけれど、ミッシング・トゥー・マッチ(恋しくてたまらない)よ。彼らが来て、日本語もいくつか覚えたんだ。『オハヨウゴザイマス』『コンニチハ』『アリガトウ』とか、簡単な言葉だけどね」と、少し寂しそうに笑った。

 このホテルは、FIFAアラブカップ2021を開催した際など、過去にも代表チームを受け入れたという。「でも、日本代表は他国と全く違った。まるで違うんだ。日本人はとても違っていて、こっちがビックリするくらいフレンドリーだし、僕たちをリスペクトしてくれた。僕個人の感想だけど、日本がベストだよ。このホテルで受け入れられて本当に良かったと思っている」。日本代表チームの姿は、色濃く心に刻まれていた。(FOOTBALL ZONE特派・河合 拓 / Taku Kawai)